ザッカーバーグが成長戦略を単にサービスの拡充だけでなく、ネットワーク効果の観点から考えていることがわかるのが2012年の写真共有アプリ「インスタグラム」と、14年のインスタントメッセンジャーアプリ「ワッツアップ」の買収である。
09年にヤン・コウムとブライアン・アクトンが開発したワッツアップは、当時主流だった携帯電話会社が提供するSMSサービスを介することなく、データ通信やWi-Fiネットワークを通じて無料でメッセージを送れる点がユーザーにウケた。
フェイスブック傘下に入った今では、月平均15億ユーザーを抱え、姉妹サービスのメッセンジャー(13億ユーザー)やインスタグラム(8億ユーザー)を超えるほどに成長している。当初は価格に敏感な消費者の心を捉えたことで、SMSユーザーが鞍替えした。だが、SMSの料金体系が下がっても、ユーザー数を伸ばすワッツアップの勢いが止まることはなかった。
フェイスブックのときと同じで、「家族や友達が使っているから自分も使う」というネットワーク効果がすでに働いていたからだ。
「ネットワーク効果はプラットフォーム開発者の選択により生まれる」と指摘するのが、経済学者で『マシン・プラットフォーム・クラウド』(未邦訳)を上梓したエリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーだ。
「需要側の規模の経済がより大きなネットワークにとって有利になる」と同著で語るように、ネットワークの外部性は“勝者総取り”の構図を生み出す可能性がある。事実、グーグルやフェイスブック、アマゾンなどはサービスを拡充し、複数のプラットフォームを同時に使う「マルチホーミング」を面倒に思うユーザーを取り込むことに成功している。
では、既存業界の企業や後発の新興企業にできることとは何か。まずは、効率化や見せかけではなく、スケール(拡大)や事業価値を高めるためのデジタル化を進め、より多くの利用者にとってインセンティブを生み出しやすい、かつ競合他社と差別化可能な多面的プラットフォームとエコシステムを築く。そこで生まれるブランド価値を生かしてコミュニティづくりを進めることで、ネットワーク効果を高めていく──。
一足飛びにはいかないが、道筋をつけて進めば、成功の余地は十分に残されている。