これは世界の3大音楽レーベルにとっても歓迎すべきニュースだ。テンセントミュージックには「ユニバーサルミュージック」や「ソニーミュージック」「ワーナーミュージック」らの出資が注がれている。
テンセントミュージックの昨年9月時点の評価額は100億ドル程度だった。しかし、上場前の評価が85億ドルだったスポティファイが、IPOにより時価総額300億ドル(約3.3兆円)に達したことで、テンセントミュージックの評価も大きく上昇することが期待されている。
また、スポティファイとテンセントは昨年の株式交換により両社の株式を、持ち合っている。テンセントはスポティファイの株式の7.5%を保有しており、その価値は今や20億ドル以上に達している。スポティファイとしても、テンセントミュージックの上場から大きなうまみが期待できる。
音楽レーベルは既存のフォーマットから得られる売上が減少するなかで、ストリーミングに期待を注ぎ、スポティファイの株式を保有するようになった。そして彼らは今、スポティファイの上場による含み益を抱えている。しかし、そのうまみがアーティストに還元されるのは、まだかなり先のことになりそうだ。
3大レーベルらはかつて、スポティファイが上場した際にはアーティストにも利益還元を行うと宣言していたが、彼らはその方針を改め、株式を売却するまでは分け前を与えないという姿勢でいる。スポティファイのIPOから数週間が経つが、その方針に変化はないようだ。
筆者はソニーミュージックとワーナーミュージックにコメントを求めたが、回答は得られなかった。ユニバーサルの広報担当者は、筆者に動画のリンクをEメールで寄こした。その動画では、ユニバーサルの親会社のヴィヴェンディ(Vivendi)の幹部が、スポティファイの株式をホールドし続ける意向であると述べていた。
アーティストらが、テンセントミュージックの上場でうまみを得る可能性はあるのだろうか。実は音楽レーベルのテンセントへの出資は、スポティファイ経由で行われている。そのため、アーティストらが利益を手にするためには、音楽レーベルがスポティファイ株を売却するのを待たなければならない。そして、そのような事態は当分の間、起こりそうもない。