ビジネス

2018.04.24 08:00

損得ではなく好きか嫌いか 中小企業が「新しい価値」を生む方法

Thanya Jones / Shutterstock.com


医療機器に特化したアドバイザリーボードが、日本医療機器開発機構である。CEOの内田毅彦が米FDA(食品医薬品局)の審査官出身で、全国の大学や中小企業に眠るアイデアや技術の種を掘り起こし、自治体と組んでインキュベーションを行っている。
advertisement

「地方創生」の分野で存在感を発揮しているのが、デロイト トーマツ ベンチャーサポートである。前田亮斗を中心に、全国に社員を配置し、のべ30地域の産業政策立案・実行支援の統括を行う。

クラウド会計で知られるマネーフォワードは、企業をお金の面からサポートする全国の公認会計士、金融機関、商工会議所、自治体と連携。裾野が広いうえに、会計士らと一緒にクラウド会計の導入をしているため「現場」を熟知している。

こうしてアドバイザリーボード10組から総計250社の推薦企業が集まった。そこから45社に絞り、最終投票には前出の入山とKAPIONの曽我弘に参加してもらった。
advertisement

曽我は新日鐵を定年退職後にシリコンバレーで連続起業家になった異色の人物で、開発・商品化したDVDオーサリングシステムをディズニーがデファクト標準したことから、DVDの世界的普及に大きく寄与した。アップルのスティーブ・ジョブズに会社を売却したことでも知られ、80歳を過ぎた現在、日本に帰国し、ベンチャー支援を行っている。

日本の競争力は「存続力」

推薦、精査、投票、取材を行いながら、見えてきた共通点がある。イーグルバス社長、谷島賢は「一社単独では生き残れない時代になった」と言い、自治体、顧客、取引先、他の地域企業とともに同じゴールを目指す事例が増えた。そして、顧客のなかに分け入り、顧客以上に顧客を知ったうえで、コア技術をカスタマイズする。これが結果的に価値の共有化につながり、企業のファンをつくっているのだ。

次に、審査したアドバイザリーボードの視点を紹介したい。大阪市都市型産業振興センターの山野千枝は6年前から「ベンチャー型事業承継」を提唱している。

「大阪の中小企業はオーナー企業が多いのですが、20年ほど前から過酷な経営環境になり、『息子に継げと言えなくなった』という声を社長さんたちからよく聞くようになりました。ベンチャー型事業承継とは、親の商売を強みにして、地続きながらちょっと離れた新しい事業で勝負をかけることです。地道な作業でも20年経てば、業態が大きく変わっているケースもあります。私は昨年の世界陸上男子400mリレーで銅メダルをとった陸上日本男子を例にしています。一人ひとりはスーパースターではないかもしれませんが、時間をつないで結果を出す。これが日本の勝ち方であり、日本の競争力とは存続力だと思うのです」

本特集に登場するミツフジ大都、平安伸銅工業こそ、ベンチャー型事業承継の成功例だろう。

一方、クラウドファンディングのマクアケは地方銀行85行以上と連携をして、銀行から紹介された企業の資金調達や新製品の開発にネットを使って協力している。13年にサービスを始めた社長の中山亮太郎は、意外な発見があったという。

「金属加工メーカーなどBtoBの下請け企業が、自社製品をクラウドファンディングでつくる例が増えています。消費者向けにチャレンジしてみたかったという潜在的な意欲ですが、他の意図もありました。もともと技術力は話題になりにくい。そこで、消費者向けの製品をヒットさせることで、製品の裏にある技術力が注目されます。それが本業であるBtoB事業のPRとなり、会社が発展していくのです。こういう使われ方は驚きでした。また、消費者向けの製品が社員の士気や採用面でのプラスに働いているそうです」
次ページ > ピンチとチャンスの両方が増えた

文=藤吉雅春

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事