ビジネス

2018.04.24 08:00

損得ではなく好きか嫌いか 中小企業が「新しい価値」を生む方法

Thanya Jones / Shutterstock.com


山井がこんな話をする。
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「大きな企業や組織は、損得軸で動かざるをえないと思います。でも、小さな会社やユニットは、好き嫌いという軸で考え、自分たちが好きなことで誰も具現化していないことを社会に打ち出すことができます。

結果的に新しい価値を生み、損得でもプラスになるという順番でビジネスができるのが、小さい会社の優位点と思います」

スノーピークが飛躍するプロセスは、スモール・ジャイアンツを定義づけていくうえで大きなヒントになっていく。
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顧客以上に、顧客を知る

私たち編集部が「スモール・ジャイアンツ」の条件としたのは、売り上げ100億円以下、創業10年以上、地域への貢献、価値の創出、そして新しい時代への幕開けを担おうとしているか、である。

なぜスモール・ジャイアンツとして、いま見出す必要があるのか。審査員の一人、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄が説明する。

「これは確信していることですが、日本の中小企業は宝の山です。しかし、経営が弱く、停滞している会社が多い。というのは、これまでは優れた技術をもった会社が親会社を主要取引先として、決められたことを細々とやっていれば事業が成り立ちました。しかし、コスト削減から値引きを求められるなど時代環境の変化によって、存続が厳しくなっています。技術力はあっても経営が弱いというテーマは、大企業で議論されてきたことでしたが、中小企業にも当てはまります。

いま問われているのは『経営力』です。

大転換の時代はチャンスの時代でもあり、日本経済にとっては若いスタートアップ以上に、中小企業が力を発揮することが重要だと思っています」

そこで私たちは、現場を熟知し、事業を相対的に見られるアドバイザリーボードに推薦企業を挙げてもらうことにした。まず、協力してくれたのは、リンカーズの社長、前田佳宏である。同社は全国の500機関と2000人の産業コーディネイターと連携し、大企業が求める技術と、それに応えられる中小企業をマッチングしている。

目利きである全国の産業コーディネイターたちから上がってくる推薦企業の特徴は、大手企業からの発注に技術力で応じるだけにとどまらず、強みを生かして自社製品に挑戦している点だ。

入山の話にあるような、下請けに満足しない経営者たちであり、高機能の紙を介護用などに商品化するハッソーや、無水調理のホーロー鍋「バーミキュラ」をヒットさせて下請けから脱却した愛知ドビーがよい例である。

一方、目利きのなかでも、リンカーズが「抜群の成約率をもたらす」と称賛するのがTAMA協会である。正式名称は一般社団法人 首都圏産業活性化協会。TAMAとは「Technology Advanced Metropolitan Area」の略だ。東京西部の多摩地区を中心に埼玉、神奈川中央部をカバーする組織であり、その名称通り、電子機器など技術系企業を中心にグローバルニッチトップが会員として名を連ねる。

90年代から業種の壁を超えて、経営者たちが技術を磨くために開いた勉強会が組織の前身である。そこに大学、金融機関、行政、産業コーディネイターが加わり、「研究開発エリア」として自然発生的に産学官金が連携する。
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文=藤吉雅春

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