そんななか、専門家なしで使えるAIプラットフォームが登場した。グーグルが発表した「Cloud AutoML」だ。プログラミング不要で誰でも機械学習を活用し、独自のAIを構築できるという。
これまで機械学習の技術はオープンソースが多かったが、専門的な知識が必要不可欠だった。今回、グーグルが発表したCloud AutoMLは、学習させたいデータを与えるだけで機械学習モデルを作成してくれる。いわばAIがAIを作ってくれるのだ。参入障壁の高いAIを身近にする画期的なサービスといえるだろう。
そのCloud AutoMLの第一弾として発表されたのが「Cloud AutoML Vision」。これは、より速く簡単に、画像認識用の機械学習モデルを作成するサービスだ。ユーザーが用意した画像データを学習させることで、画像に写っている物体が何であるかを自動的に識別することができる。
グーグルによれば、これまで提供していた画像認識サービス「Cloud Vision」でも識別したい画像をアップロードすれば認識は可能だったが、グーグルが事前に学習させていないものについては検出できなかった。例えば「雲」の画像を見せても、それが積乱雲か巻雲なのかを判別するには、事前に学習させていないとできなかった。
しかし、今回発表されたCloud AutoML Visionは違う。ユーザーが雲の画像を登録し、それぞれの画像に「これは積乱雲」「これは巻雲」といったラベル情報をつければ、後は自動的に物体とラベル情報の関係を学習する。
画像の学習は数十枚程度から始められ、学習終了後は追加的な作業をすることなく、すぐに学習結果を利用できるという。そのCloud AutoML Visionに新しい雲の画像を示せば、雲の種類を答えてくれるといった具合だ。改めて強調するが、ユーザーの作業は画像のアップロードとラベル付けだけで済むのだ。
“AIの民主化”はすでに始まりつつある
現在、Cloud AutoML Visionはグーグルから選ばれたユーザーのみが利用できるテスト段階で、料金体系なども決まっていないそうだが、今後は画像認識以外の分野にも応用を拡大していくという。
一般企業にとってAI活用の最大の課題はエンジニアの不足だ。日本でも企業がAI活用などに積極的に投資する中、エンジニアの奪い合いが起きているという現状がある。しかしCloud AutoMLが計画通りに進化すれば、熟練したエンジニアはほとんど必要なくなるだろう。専門家のいない企業でもAIの利便性を享受できるようになり、文字通りグーグルが目指す“AIの民主化”が起こるはずだ。