白書では、世界のAI関連企業が必要としている専門人材の数を約100万人と推定。しかしながら、実際に活動している人材の数は約30万人に過ぎないと指摘した。なお、この30万人のうち10万人は研究者だ。そのため、不足している専門人材の数は約80万人とみるのが妥当だと白書は分析している。また、AI専門家を育成するのが難しい点を勘案し、人材不足が慢性化するとも予想した。
ちなみに、AI関連の研究所などを備えた、世界367カ所の教育機関から排出されている人材数は約2万人程度しかいないとも分析している。こちらの数も、市場の需要を大きく下回っている状況だ。当然、AI専門家の“価格”も高騰。報酬面において、かなりの“高給取り”となり始めている。
市場調査機関のIDGが発表した「2017インターネット・ユニコーン企業の給与報告書」によると、人工知能関連の高級職の場合、平均年俸が他の仕事と比べて55%以上高く、中級職は90%、初級雇用は110%高いとされている。日本の業界関係者のひとりも次のように話す。
「日本の大手企業でも、AIや先端テクノロジー関連の求人価格は高くなっています。それでも、なかなか人材がみつからないというのが実際のところ。どこも人材獲得のチャネルを開拓しようと躍起になっています」
政府レベルで人材発掘・育成を目指す日英中
そのような状況で、米国は企業レベルで、日本、欧州、中国などは政府レベルでAI人材確保に総力を傾けようとしている。なかでも特筆すべきは中国の動きだ。中国は2030年までにAI分野で世界をリードするという計画を立て、積極的なアクションに乗り出している。
現在、中国では小・中高校のカリキュラムにAI科目を追加。大学には、AI関連の学部および専攻学科を大幅に新設するなどAI教育の幅を拡大している。2017年9月、人工知能の単科大学を開設するとした、中国の高等研究機関・中国科学院大学(UCAS)が代表的な例だろう。
中国企業がAI専門家に支払う給与も急速に上昇している。関連学科の学生の場合、卒業前にすでに勧誘を受けることが当たり前となっており、初任給も大幅に上昇しているという。