奥本:最近はビットコインだけではなくイーサリアムとかライトコインとかも市民権を得てきたよね。そして、暗号通貨を使って資金調達をするスタートアップも出てきた。
渡辺:暗号通貨を使った資金調達をイニシャルコインオファリングでICOというわけだけど、去年はICOだけで60億ドル以上の資金が集まったらしい。
奥本:スタートアップへの投資はプロのベンチャーキャピタルが念入りなデューデリジェンス(投資対象のリスクと価値の精査)をするのだけど、ICOは個人から直接資金を調達して大丈夫なのだろうか?
渡辺:そこは今世界のホットな話題。色々な国で規制がはじまってきているけれど、アメリカも今年は相当規制されるんじゃないかな。
奥本:SEC(証券取引委員会)から停止命令が出たICOも出てきてるよね。12月のレストランレビューサービスのマンチー、1月の暗号通貨銀行のアライズバンクとか。
渡辺:最近、SECとCFTC(商品先物取引委員会)がミーティングして、規制を強めるニュアンスの見解を発表してた。それ以前に、業界内で自主的にICOを正しく運用していこうとする人たちもいて、投資家のエンジェル投資資格を審査する ICO専用のプラットフォームを作ったりしてる。コインリストとかね。
奥本:そのコインリストってどうやって問題あるICOを防ぐの?
渡辺:コインリストはICOの扱い案件はものすごく少なくて1〜2カ月にひとつしかない。シリコンバレーの人たちがやってるし、人的ネットワークで選んだ案件だけをやっているんじゃないかな。あと、買い手、つまりエンジェル投資家側の審査をちゃんとやってるんだよね。アメリカでは、SECに届け出なくても個人から資金調達していいけど、本当はそこでSECが定める基準を満たしてる人からしか資金を受け取ってはいけないことになってる。
奥本:例の、資産500万ドル以上か家計年収30万ドル以上というやつだよね?
渡辺:そうそう。コインリストは、納税申告書なんかをスキャンして送らせて審査をしている。
奥本:でもそれって、エンジェル投資家がちゃんと投資できる資産がありますよ、ということを証明するだけで、必ずしも投資が案件をちゃんと判断できるという証明にはならないよね。
渡辺:そこは自己責任で見分けましょう、って感じかな。
奥本:何をどう見分けたらいいんだろう?
渡辺:チーム、技術とユースケースの妥当性、市場の広がり、って感じ?
奥本:それって、エンジェル投資家やVCのデューデリジェンスとあんまり変わらないかもしれないなあ。
渡辺:あと、単に「会社やファンドの資金調達を暗号通貨でやった」というタイプではなくて、それ自体にIT技術として役割があるユーティリティコインと呼ばれるものがあるんだけど、その場合は、オープンソースソフトウェアみたいな成長をしていくのね。なのでソフトウェア開発者のコミュニティで受け入れられるのがとても大事。コアメンバーがオンラインコミュニティに積極的にコミットしてる、とかも見どころにはなると思うよ。
奥本:結局は、投資家がそれなりの知識やリサーチ能力をもってスタートアップの良し悪しを判断するということだよね。
渡辺:そうね。あと、ベーシックなレベルで「ちゃんとホワイトペーパー(企画、構想、技術などに関する公開文書)を読む」っていうのもある。ICOではそのコインの技術やビジネスモデルを説明するホワイトペーパーが出るけど、それを読む、と。