サンダンス映画祭で注目のVR作品、ウィル・アイ・アムらが制作

Photo by MTV/TRL/Getty Images

人気ヒップホップグループのブラック・アイド・ピーズが、1月18日からユタ州で開催されたサンダンス映画祭で前代未聞のVRプロジェクト「マスターズ・オブ・ザ・サン」(Masters of the Sun)を発表し、話題を呼んでいる。

「マスター・オブ・ザ・サン」は、ブラック・アイド・ピーズが昨年秋に出版社のマーベルと提携してリリースした同名コミックのVR版だ。イースト・ロサンゼルスのヒップホップグループがギャングやドラッグの売人をゾンビに変えるエイリアンと戦う勧善懲悪のストーリーが、13のエピソードを通して描かれる。

出演者にはラッパーのラキム、KRSワン、クイーン・ラティファら。音楽にハンス・ジマー、監修にコミック界の巨匠スタン・リーと、各界の大物が参加していることでも注目を浴びているが、最も特筆すべき点は作品がもたらす新しい視聴体験だろう。表示される吹き出しを見つめることで物語が進む仕組みになっており、視聴者はコミックを読む時のように速度をコントロールすることができるのだ。

物語の作者で、ブラック・アイド・ピーズのブレーン的存在であるウィル・アイ・アムは、このプロジェクトの目的を「VRの活性化」だと話す。ウィル・アイ・アム、タブー、アップル・デ・アップの3人からなるブラック・アイド・ピーズは一貫して、自分たちのファンを楽しませることだけでなく、業界全体の活性化を使命としてきた。

「音楽業界は新たなマネタイズの手段を必要としている。そして新しいビジネスモデルでは、アーティストも主導権を握るべきだ」とウィル・アイ・アムは言う。

アーティストの名を冠した商品やプロジェクトは名義を貸しているだけの場合も多いが、「マスター・オブ・ザ・サン」はブラック・アイド・ピーズが単独でプロデュースした作品だ。マーベルは流通のみを扱う。

新たな手法でストーリーを語る

「今後はこのプロジェクト自体をVR制作の拠点にしていきたい」とタブーも言う。その意味をウィル・アイ・アムが次のように説明する。

「リアーナからアッシャーまで我々が知るアーティストは皆、VRをやりたがっているが、自分たちは彼らと組むのに最適な立場にいると思う。制作体制は完璧だし、他のアーティストを引っ張って来れるようにプロトタイプやデモを作ってきた。彼らが我々のビジョンに共鳴さえすれば、作り続けることができる」

実際には、今すぐにVRのビジネスモデルで儲けることは難しいだろう。しかしブラック・アイド・ピーズは前向きだ。彼らは「マスターズ・オブ・ザ・サン」が既存のVR市場で成功するだけでなく、人々をエンパワーすることを望んでいる。ウィル・アイ・アムが言う。「ストーリーを語る方法はいくらでもあるということを伝えたい」

VR版「マスターズ・オブ・ザ・サン」はGear VRに対応し、1話から4話は無料、5話以降は各1.99ドルで購入可能。

編集=海田恭子

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