VRで犯罪者を裁く「仮想現実法廷」が現実になる日

shutterstock.com

テクノロジー分野で注目のVR(仮想現実)が法廷に導入される可能性があると、FBI捜査官やVRの専門家らが語っている。VRは裁判の過程で有効活用が見込まれる一方で、懸念事項もある。

法廷におけるVR活用の可能性を示す作品を作ったのが、報道博物館の「Newseum」とVR制作会社の「Immersion」だ。題材となったのは1970年代後半から1990年代半ばにかけて大学や航空会社に爆発物を送り付けた“爆弾魔”のユナボマーの事件。犯人のセオドア・カジンスキーが逮捕された小屋の中を見て回って物を手に取ることも可能で、実際に起きたシナリオも体験できる。

この事件を担当したFBI捜査官のTerry Turchieがナレーターを務めており、物議をかもしそうな証拠を発表するかどうかなど、報道倫理に関わる重要な判断をユーザーに迫る。

VRは犯罪捜査の未来を担っており、すでに犯罪者を有罪にする手助けになっていると、Turchieは語る。「捜査や法廷陳述を有効に進める手立てとしてVRは急速に導入され始めている。VRを使えば3次元画像化やモバイルマッピングが利用でき、犯罪現場や証拠を保存できるため、今後ますます重要な役割を担うはずだ」

本格導入に向けての課題はコストの高さだという。「VRに関するコストが下がってくれば、警察官や捜査官が捜査の精度を上げ、広く導入されるようになるだろう」

VRの導入は犯罪学者や陪審員、捜査機関に新たな選択肢を与えることになる。「VRは実際に何が起きたかを、陪審員が体験できるという意味で大きな可能性を秘めている。約21年前、ユナボマーの事件を担当した検察チームは全ての証拠書類をデジタル化し、連邦裁判所で初めてペーパーレス化を実現した。法廷へのVRの導入はこの流れを加速させることになる」とTurchieは言う。

しかし、懸念されるのはVRが与える臨場感が、陪審員たちの心証にどういう影響を与えるかだ。犯罪をVRで体験することで、事実に対する印象がゆがむ可能性もある。また、陪審員のメンタル面への影響も懸念される。VRの法廷への導入には、慎重な判断が求められそうだ。

ユナボマーのVRは2018年末まで米ワシントンDCのNewseumで体験できるほか、HTCのVRコンテンツ配信サービスViveportでも配信されている。

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事