ミネルバ大学は2014年にBen Nelson氏が創業したスタートアップの大学。既成概念を捨て、既存の大学が抱える課題の解決をし、最高のクオリティの刺激的な学び場を目指すとして、シリコンバレーのベンチャーキャピタルなどから7000万ドルを資金調達し、ハーバード大学をはじめとするアイビーリーグの学部長ら参画のもと設立されました。
生徒が“エンゲージした状態”を保つ
少し専門的になりますが、学びの科学(Science of learning)では、学びに夢中になっている状態を「エンゲージド(従事している)」の状態と言います。そして、その状態を持続させるための代表的な手法に、アクティブ・ラーニング(能動的な学び)のアプローチがあります。
ミネルバ大学ではこのアクティブ・ラーニングで、生徒が常にエンゲージされた状態を保ち、知識を効率的に深く定着、蓄積させ、適切な場で応用していくことを目指しています。全てのカリキュラムがこの基本方針でデザインされており、1コマの授業プラン作成に100時間が割かれています。
その授業において、先生は例えるならばジムのパーソナルトレイナー。授業中には脳をフル活用した積極的な参加が求められるので、毎回終わると脳をトレーニングした疲れが一気に押し寄せます。
入学間もないですが、生徒一人一人にとってチャレンジを課すこのミネルバの学習環境は私にとってこれまでで最も刺激的な学び場になっています。今回の記事では、どんな点で最高に刺激的な学び場だと感じているのか、2つのポイントを紹介したいと思います。
思考プロセス重視のディスカッション
今期セメスターで私は、基礎科目の「批判的思考(Critical thinking)」と「創造的思考(Creative thinking)」を身につける2教科を取得しています。
授業は1コマ1時間半を週に4回。授業はオンラインでどこからでも受講することができます。出席しても内職したり、物思いにふけったりする講義型の授業とは違い、すべてセミナー形式で生徒の議論中心に進みます。
ミネルバが独自に開発したオンラインプラットフォームによって授業は全て録画され、生徒の発言も全部記録されます。このプラットフォームが密度の濃い緊張感溢れた授業を可能にするのです。
例えば1クラス8人などの授業では、全員がズームアップの状態で参加。元名門大学在籍の教授がテンポよくファシリテーションをし、難しい質問に対して必ず一人一人の生徒を指名します。また、毎回宿題で約50〜100ページにおよぶ文献の予習を済ませている前提なので、授業では得た知識をどう応用するか、具体例を混ぜながら思考の過程を自分の言葉で説明することが重要です。
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9月の入学から5か月ほどですが、難解かつグローバルな問題を題材にとてつもないスピードで学んできました。世界の飢餓、水不足、地球の気候変動、伝染病対策、フェアな裁判判決……どれも即座に白黒つけがたく結論を出すのが困難な問題ばかり。これらの問題の原因を正しく捉えて分析し、人間ならではの知恵とアルゴリズムを有効活用しながら最適な結果を模索する特訓をしています。