ロックフェラーが遺した「10万人の連絡先カード」に学べること

デービッド・ロックフェラー(Photo by Paul Zimmerman/WireImage)


私はてっきり、彼がフォトグラフィックメモリー(映像記憶)能力を持っているのだと思ったが、実はそうではなかった。後で知ったのだが、彼は事前に、重要な出席者に関する前回のメモや各人物の分析情報などについて、秘書から説明を受けていた。

彼が過去の会話に少し触れただけで、相手の顔はパッと明るくなる。彼は、人が自分のことにばかり興味があることを知っていたのだ。

私は昔、影響力と説得術について執筆を始めた頃、1億ドル(約110億円)という巨額の生命保険を売った実績を持つ保険外交員を取材した。「どうやって売り込んだのか」と聞くと彼は「何も売り込む必要はなかった。強固な関係を築いていれば、ビジネスは付いてくる」と語った。

デービッド・ロックフェラーはもちろん、人生の大部分を通して習慣的に強い関係を構築してきた。彼を個人的に知る大手米銀チェース・マンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)の元上級アソシエート、アラン・フレイシュマンは、ロックフェラーの死後に米誌フォーチュンに寄稿した記事で、彼が人脈構築ではなく関係性を重視することで「人を喜ばせ、警戒心を解いていた」と記している。

「もしあなたがロックフェラーの数々の会合や交流の全てを、壁にとまったハエのように聞くことができたならば、子どものバレエの発表会から親の最近の健康問題まで、招待客の細かな情報まで尋ねるロックフェラーの言葉を聞けただろう。(…)彼の会話は常に変化を起こすもので、取引のためでは決してなかった」

平凡なビジネスリーダーは取引を行うが、傑出したビジネスリーダーは変革を生み出す。それをどう実現するかは、ロックフェラーのローロデックスを見れば分かる。

編集=遠藤宗生

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