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川村雄介の飛耳長目

robert cicchetti / shutterstock.com

平成不況に入って間もないころ、ある大手証券会社のOBが晴れ晴れした表情で言った。「株を持っていて本当によかった」。彼は駆け出し社員のころ、昭和40年の証券大不況に見舞われた。当時最大手だった山一證券の破綻がささやかれるなか、勤務先の経営も厳しくなり、株価は30円台にまで下落した。「会社のピンチを救おう」と熱弁を振るう上司に勧められるまま、社内融資制度を利用して、1万株を購入した。

バブル期に株価は購入時の120倍に達した。しかもこの間、会社はいわゆる無償増資を繰り返したので、株数もぐんと増えている。自社株投資制度で少額ながら継続的な購入も続けていた。バブルが去った退職後、持ち株の一部を売却した。それでも純益は5000万円を超えた。

彼は稀有の成功者なのだろうか。株式投資では得した人も損した人もある。一概に株式ドリームを強調すべきではないだろう。だが、失敗した人の多くは短期かつ高リスクに偏重したお金の入れ方をしているようだ。反対にこの元証券マンのように、超長期でじっくり投資を続けた人に成功例が多いと思う。

長期の証券投資が資産運用と企業の成長促進の両面でプラスになることは、官民のコンセンサスになっている。長期の証券積み立て投資であるNISAや積立NISAに税制メリットを付けている理由でもある。

ところが、根強いアンチ証券投資派も存在する。「投資などやめろ」という書籍さえ出ている。その投資理論への切り口や「東京オリンピック後は未曽有の不況に陥る可能性があるので、投資などしないほうがよい」といった見方には、強い違和感を覚える。何よりも、金融仲介者は搾取者で投資家は犠牲者、原則的に投資には距離を置くべし、という視点はいかがなものか。

アメリカも欧州も中国も、今後の持続的で力強い経済成長と国民一人ひとりの豊かな生活のために、証券市場を通じた調達と運用を重視している。わが日本のアベノミクスの核もここにある。いまさら、証券投資がなぜ大切なのかを繰り返す必要はあるまい。

文=川村雄介

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