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2018.01.15 07:00

「投資などやめろ」と言うアンチ株式投資派への疑問


現在必要なことは、証券投資をさらに促進する施策を加速させることだと思う。1800兆円を超える日本の家計金融資産の収益率は非常に低い。半分が現金・預貯金で、ほぼ収益ゼロだからだ。欧米に比べて、株式など証券の比重が極端に低いことは周知の通りである。産業界にとっても、潤沢な個人金融資産がリスクマネーに回らない現状になっている。何とかしなければならない。証券投資関連の税金を、思い切って引き下げるのも一案かもしれない。

株式の税金は、昭和時代、個人の年間50回、20万株未満の取引については、譲渡益が非課税であった。平成に入っても、株式取引に軽減税率が採用された時期があった。だが、適用が終わると、税率は10%から一気に2倍の20%に跳ね上がって高止まりしている。

国の財政が厳しく、新たな施策のために税源が必要だ、という議論は理解できる。そのゆえか、最近は一部の人々から代替税源として利子、配当や株式譲渡益などの金融所得のさらなる課税強化を行ったらどうか、という言説もあるやに聞く。とにかく取れるところから取るという、木を見て森を見ない議論のような気がする。

ラフな試算だが、仮に金融所得税率を5%引き上げると、家計部門への増税は2500億円〜6000億円程度、個人消費は今後5年間で2兆円〜4兆円余り減る。また、年収が1億円〜2億円台の層の増税額は400億円程度なのに、年収400万円〜500万円台の層の負担増は700億円にもなりそうだ。株式増税は実は大衆増税なのである。

さらに、株式時価総額は10兆円程度吹き飛び、企業の設備投資は10兆円近く減少する可能性がある。成長戦略どころではなくなってしまう。

日本が税源確保の必要性を迫られていることは間違いない。だがその王道は経済のパイを拡大して総税収を増やすことにこそある。株式でみれば、むしろ減税して取引量と取引額を拡大していくことのほうが、筋がよい。証券税収の裾野拡大だ。税率を上げるような経済への「北風」政策ではなく、税率を下げる「寄り添い」政策で市場を後押しするほうが得策だ。

2008年のリーマンショック時である。卒業年の教え子にETFを勧めた。彼女は約8000円で購入した。最近、2万1000円で売却したという。そしてこう言うのだ。

「先生、今度はナマの株式を買いたかですね。それも長い目で」。

文=川村雄介

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