たとえ最高のリーダーでも、信条や行動、評価などの習慣が変わることはほとんどない。新たな事業モデルを作るために古い考え方を捨てられる人は、ほんの一握りだ。現職のリーダーにとっては残念なことに、急速に変化する厳しい競争を生き残るには、新しく、より価値の高い事業モデルが必要だ。こうした変革を起こせないリーダーが行きつく先は、リーダーシップの交代だ。
このパターンははっきりと表面化しつつある。ウォール・ストリート・ジャーナルによると「これまで長く四半期収益にこだわってきた投資家や取締役会は今、不可能を可能にすることを目指す新興企業の攻勢を防ぐべく、大きく迅速な賭けに出られるリーダーを探している」という。
これは、従来の市場で求められていたものとは大きく異なる。これまでは、組織を“軌道通り”に走らせ、先見性のある新戦略を打ち出すよりも、現状の戦略を最適化できるリーダーがよしとされてきた。だが、旧式の手法はもはや通用しない。ウーバーやエアビーアンドビー、ソーシャル・ファイナンス(SoFi)のようなユニコーン(企業評価額が10億ドル以上の未上場企業)は、足取りの重い大企業の下で状況を一変させている。
現代のリーダーは過去の習慣を壊し、プラットフォームやネットワーク、人工知能(AI)の時代にふさわしい新たな考え方、ビジネス、評価のモデルを見つける必要がある。最近、自分自身や会社を変革できなかったため交代させられたリーダーたちを見てみれば分かることだ。
1. フォード・モーター(自動車大手)
同社は、入社28年のベテラン、マーク・フィールズ前最高経営責任者(CEO)を解任し、「変化をもたらす人材」として、自動運転車の開発に取り組むフォード子会社の会長を務めていたジム・ハケットが新CEOに就任した。これにより取締役会が発したメッセージはシンプルで、ソフトウエアとテック業界が急速に破壊を進める中で、現代のリーダーは速度を上げて大きな賭けに出なければいけない、というものだった。
2. バーンズ・アンド・ノーブル(書籍販売大手)
ロナルド・ボーワー前CEOが解任された理由について、取締役会は「同社に適さず、退社するのが全関係者のためだった」と説明した。短い在任期間中、ボーワーは原点回帰の戦略を推し進めたが、世界でも指折りのイノベーション企業であるアマゾンが最大の競合となる同社にとって、これはリスクの高い戦略だった。