IFPRIがまとめた「世界の飢餓指標(Global Hunger Index、GHI)」ランキングによると、調査対象の119か国のうち、インドは北朝鮮より7ランク下の100位だった(7ランク下には、アフガニスタンが入っている)。
ランキングは、栄養不良の人の割合と、5歳未満の子供のうち痩せすぎ、または発育阻害の状態の子供の割合、乳児死亡率の4項目に関する評価に基づいている。そして、インドの順位はこの国の「憂慮すべき現実」を指し示すものだ。モディ首相の一連の経済政策は明らかに、子供の飢餓の問題に対する実質的な効果を上げていない。
また、これほど多くの子供が飢えているということは、急速な経済成長をとげ、株式市場も活況を呈するインドでいまだ貧困問題が改善されていない証拠でもある。投資家らは、こうした状況に特に注意していく必要がある。解消されない貧困と腐敗の問題は、新興市場の成長と株価の上昇を足止めさせる原因になり得る2つの重要な要素だ。
政策だけでは改善しない?
インドの経済情勢だけをみれば、子供の飢餓の問題が依然としてこれほど深刻なことに驚く人もいるかもしれない。インドは国際的な競争力でも、ビジネスのしやすさなどでも、信用格付けでも評価を上げてきている。
だが、この問題は所得格差の拡大というより大きな問題の一部でもある。インドの所得格差については、フランスの経済学者トマ・ピケティも著書で詳しく述べており、現在の格差は英国統治の時代よりひどいと指摘している。
実際のところ、インドの上流・上流中産階級にとって、子供の健康と栄養状態や教育が最優先課題でないことは明らかだ。米ロングアイランド大学ポスト校のウダヤン・ロイ教授(経済学)はこうした人たちについて、「関心があるのは火星に向けて宇宙船を打ち上げることなど、国の栄光に関わる表面的な事柄ばかりだ。政権幹部は貧困層が直面する問題に、あまり関心を持っていない」と話す。
教授はまた、自分の身近にいるインドの富裕層についても、「第4世代(4G)携帯電話やタイで過ごした休暇についての自慢話などばかりしている」と嘆く。貧困に関する統計について教授が話題にしても、すぐに話題を変えるというのだ。
ただ、こうした考え方は、一部の人たちの宗教的信条に関わっている可能性もあるという。ヒンドゥー教では人間の置かれた状況について、宿命論的に語ることが多い。「現在の現実は何であれ、重要ではないと考えるのだ」という。
「ただ神々を幸せにすればいい。そうすれば死後、より良い人生を送れる人に生まれ変われる。たった今の人生をより良くすることには、あまり大きな関心は持たれないのだ」
それでも、現政権は2022年までに子供の栄養失調の問題を解消するとの目標を掲げており、政権交代以降、子供の飢餓率には改善も見られている。モディ首相が貧困問題によって自らの改革目標を妨げられることがないようにするためには、今後も数多くの仕事に立ち向かっていかなければならない。