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科学と医薬を担当。21世紀は生物学の世紀であると信じている

クレイグ・ヴェンター ヒューマン・ロンジェビティ共同創設者兼CEO

「究極の人間ドック」は、世界一豪華な診察室から始まる。ソファや個人用トイレを完備し、フルーツの盛り合わせも用意された一室。私はここを拠点に、これから一日がかりの健診を受けることになる。

まずは血液検査と、全バイタルの測定。次に、35分間のMRI検査を2セット行い、全身の画像を撮影する。心臓の超音波検査を終えると、ニース風サラダの昼食が待っている。

次は検便。その次の認知機能検査では、コンピューター画面にさまざまな文字が、目の回るようなスピードで映し出される。さらに心臓CTスキャンまで行うと言われた時には、私はまだ若いので大丈夫と言って断ろうとした。

すると、この人間ドックを考案したJ・クレイグ・ヴェンターは肩をすくめ、「私はベトナムで、18~22歳で亡くなった人々の解剖をしていたが、その多くが心臓血管疾患を抱えていた」と説明。続けて、こんな不穏な言葉を発した。「この検査では、何らかの問題が見つかる。大切なのは、その後どうするかだ」

そう、彼は「ヒトゲノムを解読した男」として知られるあのクレイグ・ヴェンターだ。政府が出資する「ヒトゲノム計画」の進捗の遅さに業を煮やした彼は、1990年代後半にゲノム解析会社を立ち上げ、予定より2年も早くヒトDNA配列の解析を完了させた。彼はこれにより、世界で初めてDNA配列が完全に解析された人物となった。

ヴェンターの勢いはその後も衰えていない。チャールズ・ダーウィンに触発された航海の旅で世界中をめぐり数千種の新種生物を発見したほか、合成生命の作成にも成功。これまで3つの企業を創業し、うち最も大きな注目を集めたセレラ・ジェノミクス社から解雇されるまでは、保有資産が10億ドルに迫る勢いだった。

そして彼は今、17年前のヒトゲノム解析以来で最も野心的なプロジェクトに取り組んでいる。3億ドルの資金を調達し、DNA情報を駆使して人間の寿命を数年、さらには数十年と延長する方法を探る新企業「ヒューマン・ロンジェビティ(HLI)」を創業したのだ。

同社の事業の中核をなすのが、「ヘルス・ニュークリアス」と呼ばれる人間ドックだ。私は今回特別に無料で受けさせてもらったが、本来の価格は2万5000ドル(約280万円)。ただ、体の隅々まで調べ上げるこの検査法については、偽陽性の結果が続出するとして反対する医師も多い。

クリーブランド・クリニック循環器科のスティーブン・ニッセン部長は「多数の研究から、さまざまな検査の実施は利益よりも害の方が大きいことが分かっている。MRIで全身を調べれば、何も見つからないことの方がまれだ。これは良い医療だとは言えない」と語る。

だがヴェンターはこう反論する。「私たちが『健康な人々』を検査していることに、多くの医師が苦言を呈している。私の返答はこうだ。そうした人々が健康だとなぜ言えるのか? 今使われている『健康』の定義は中世のもの。見た目が元気そうで、自分でも元気だと感じていれば、健康体とみなされる。今では、人の体を調べる別の方法がある」

現在70歳のヴェンターは、自らの経験を例に挙げた。昨年、自身が考案した人間ドックを受けたところ、前立腺がんが見つかり、同年11月に摘出手術を行った。また、ヴェンターが師と敬う微生物学者でノーベル医学生理学賞受賞者のハミルトン・スミス(85)も、肺に悪性リンパ腫が見つかり、治療の結果、順調な回復が見込まれているという。

翻訳・編集=遠藤宗生

 

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