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2017.11.04 17:00

ボケとツッコミで「医療のキモ」をおさえる方法

Elnur / shutterstock.com

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あれは日曜日の早朝のことだった。ふだんならまだ夢の中にいるはずが、なぜかパッチリと目が覚めたのだ。どうやら体の奥から突然届いた信号によって目が覚めてしまったらしい。

「あれ? なんでこんなに腹が減ってるんだろう?」

そう、それは猛烈に腹が減っている際に感じる胃の痛みに似ていた。布団を脱け出してキッチンへ急ぎ、とりあえず冷蔵庫にあった残り物を口に放り込む。

だが、いっこうに腹の痛みは治まる気配がない。しかもなでたりさすったりするうちに、どうも痛む箇所は胃ではないような気もしてきた。いったいこれはなんだと戸惑っているうちに、痛みはますますひどくなるばかりだ。気がつけば、脂汗を流しながら、スマホで必死に休日診療の窓口を探していた──。

こうして思いもしなかった入院生活がはじまった。下された診断は「急性すい炎」。

ざっくりいうと(素人なのでそもそもざっくりとしか説明できないが)、いつもは食べ物の消化に必要な酵素を分泌しているすい臓が、何らかの理由で正常に機能しなくなり、自分で自分を消化しはじめてしまったために、急激な炎症が生じたということのようだ。しかもその際、他の臓器にダメージを及ぼすというのだからタチが悪い。

入院患者というのは寝たきりのほかは検査くらいしかやることがない。だがこの検査が厄介なのだ。医師が結果について説明してくれるのだが、その説明がいちいちこちらを不安にさせる。

「血液検査の数値はだいぶ落ち着きましたが、CTの画像をみるとまだかなりすい臓が腫れていますね」
「はぁ……」
「これはですね、すい液によってすい臓が溶けてしまったということなんです」
「とっ、溶けた!?」
「はい、すい液には人体のなかでももっとも強力な消化酵素が含まれていますからね」
「あ、あの、溶けるというのはいったいどういう状態なんでしょう?」
「すい臓の表面の細胞が壊死しているという状態です」
「えっ、壊死!?」

こんな具合である。

溶けるだの、壊死するだの、もう二度とこの体はもとに戻らないんじゃないかと不安になる。つくづく医師と患者とでは、知識の量に圧倒的な差があることを思い知らされた。だがそんな病床での怯えきった日々に、一条の光が射し込んだ。それは一冊の本との出合いによってもたらされた。

『こわいもの知らずの病理学講義』仲野徹(晶文社)は、これから医療サービスを受ける可能性のあるすべての人が読んでおくべき一冊だろう。

ひとことでいえば本書は、「病気の成り立ち」について教えてくれる本である。人はなぜ病気になるのか。病はどうして生まれるのか。その「ことわり」を、難解な化学式などを一切使うことなくわかりやすく提示してくれる。
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文=首藤淳哉

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