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シネマの女は最後に微笑む

偏食で有名なトランプ大統領(Anadolu Agency / gettyimages)

11月5日、トランプ大統領が来日する。政治的事案もさることながら個人的に興味があるのは、安倍首相とのゴルフ会談の後の晩餐で何を食べるのかということ。首相行きつけの赤坂の料亭で、和食に挑戦するのだろうか?

というのも、トランプ大統領は偏食で有名だからだ。大好きなのはハンバーガー、ポテトチップス、コーラ、そしてウェルダンに焼いたステーキにケチャップをかけたものだという。

いかにもアメリカ的に見えるが、多民族国家のアメリカはバラエティに富んだ食の国でもあることを考えると、この嗜好はむしろ「お子様」と言うべきか。あるいは、もともと「食」にはそんなに関心がないのかもしれない。ホワイトハウスの料理長にとっては、日々のメニュー作成が悩ましいところだろう。

どこの国でも家庭で料理をするのは主に女性、有名レストランや要人お抱えのシェフは圧倒的に男性が多い。が、例外もある。そして、例外だからこそドラマになる。

“おばあちゃんの味”に惚れた仏大統領

2012年に公開されて話題となった『大統領の料理人』(クリスチャン・ヴァンサン監督)は、80年代に史上初の女性料理人として、ミッテラン仏大統領に2年間仕えたダニエル・デルプシュをモデルとした作品だ。ヒロインのオルタンスを演じるのは、ポジティブでチャーミングな中高年女性を演じて定評のあるカトリーヌ・フロ。


映画「大統領の料理人」のモデルになったシェフ、ダニエル・デルプシュ(右、gettyimages)

物語は、南極フランス領の基地で1年間の「給食シェフ」の仕事を終えようとしているオルタンスの現在から、大統領官邸で働いていた過去を振り返るかたちで進んでいく。

フランスの片田舎で小さなレストランを営んでいたオルタンスは、ある日文化省のお迎えで、パリのエリゼ宮に連れて行かれる。大統領のプライベートシェフとして、料理界の著名人から推薦を受けた結果の大抜擢だ。あまりの重責に最初は固辞する彼女だが、強く求められて肚をくくる。

24人の腕っこきの男性コックたちによって、年間7万食の食事が作られている官邸の台所は、まさに男の世界。そこに、大統領専属という特別な任務を与えられた女料理人がいきなり登場したら、嫉妬と反発を買うのは必至。彼女は早速、彼らの冷ややかな洗礼を浴びる。

与えられた専用の厨房で補佐につけられたのは、息子ほど歳の離れたパティシェのニコラ。時に彼の先生役をしつつ、きびきびと動き回るオルタンスの姿は、堂々としていて頼もしい。監督が有名な美食家というだけあって、会話に頻出するさまざまな食材や調理法とともに、ひとつひとつの料理のシーンがすばらしく、見るうちにお腹が空いてくる。

ニコラの尊敬と信頼を取り付け、最初の会食料理が大統領の気に入られたことで、給仕長のルシェも彼女に一目置くようになる。実力さえあれば難局も切り開けるし、ちゃんと見ている人は支持してくれるのだと勇気づけられる。

ひょんなことから宮廷内で迷って大統領に偶然出会ったオルタンスは、彼から深い感謝の言葉を手向けられる。技巧に走った飾りの多い料理ではなく、素材を生かした本物の味、昔ながらの「おばあちゃんの味」が大統領を魅了したことを知った彼女は、より良い食材集めに一層熱を入れ、奔走する。

文=大野左紀子

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