キャリア・教育

2017.11.22 18:00

AI時代こそ、コンフォートゾーンを出よ|IT評論家 尾原和啓

(左)IT評論家 尾原和啓氏(右)Forbes JAPAN Web編集長 谷本有香

自身の強みとしていたことが、AIに代替される時代がやってきたとき、あなたはどんな風に生き残ればいいのか。京都大学院で人工知能論を研究、産業総合研究所人工知能センターのアドバイザー歴任のIT評論家の尾原和啓氏に、Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香が聞いた(前編はこちら)。


谷本有香(以下、谷本): 私、大学でも教えていて思うのは、モチベーションってトップ20%の何も言わなくても動いてくれる人ではない、残りの80%をどう動けるようになるかだと思うんです。つまり、その80%のモチベーションが着火する原資をいかに探るかということだと思います。

けれど、結局、それとて、いわゆるトップ20に取って替わられる程度のモチベーションだったりする。それなら、モチベーションを仕掛けること自体、本当に必要なんだろうかと思うことがあるんです。

尾原和啓氏(以下、尾原):まさに、その着火の原資を探したり、モチベーションを仕掛ける方法論として書いたのが、「ストレングスファインダー」と「偏愛マップ」なんです。

ストレングスファインダーとは、米国ギャラップ社が開発したオンラインで才能を診断するツールで、サイト上で質問に答えると自分の強みや才能がわかるというもの。その結果、僕は「着想」の人。谷本さんは「最上志向」とか「回復志向」とかが入っていると思うんだけれど……。あまり相手のことを知らずチームになったときにその結果を話題にすると、非常に盛り上がる。

例えば、谷本さんのことを知らなくても、「最上志向の人」ということがわかるだけで、相手の強みつまり拘りだったり褒められて嬉しいことが理解でき、スムーズにコミュニケーションが取れるんです。

僕は、初対面の人たちやチームメンバーなどのアイスブレークには、ストレングスファインダーの結果でわかりやすいキャラクターの人や、強みを持っている人をいじります。そうすると緊張が解けて盛り上がる。その後に、チーム全体を見渡し、チームに一人しかいない強みを探すことをするんです。それを宝物と僕は呼んでいます。

この変化の時代、どんな強みが勝ちにつながるかわからない。だからこそ、個々が持つ強みにフォーカスしてあげることが大切なんです。また、このようなゲーム性のあるツールを用いることで、互いがコミュニケーションをしやすくなり、チームメンバー同士の学びを促進していくんです。

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谷本:ただ、プロジェクトなどを実際に一緒にしていないと、相手の資質はなかなかわかりませんよね。

尾原:その場合に有効なのが、偏愛マップ。A4用紙に自分だけだろこれ好きなのはという偏った愛を書き尽くしていって、そのマップを交換しあって話しあっていくのです。そうすると、自分の中でイグニッションが回っている会話が増えるんです。

偏愛マップには2つ効用があります。まず、人って、共通のポイントが見つかると盛り上がるんです。自分が好きなものが重なった時の共鳴感。そうするとエンジンが回る。これが一つ目。

もう一つは、人は自分の好きなものを語っているときが一番魅力的だということ。つまり、「お前しか持ってない小さな好きはなんなの」って聞くと、好きのエンジンがどんどん回り出すんです。

今までは、心のエンジンのイグニッションは、車で言うところの車両を押してエンジンを始動させるように強制的に押しがけしたり、外からの刺激で回り出していたけれど、今の若い世代は、外からエンジンを回されることをダサいと思っている。だから、まずは自分の中でほっといても勝手に回るエンジンを小さくても良いから見つけ、それを「皆とやると楽しい」と外へ広げていく。

そういう空間をどう作るかが、今の人たちを動かす方法なのかなと思っています。

谷本:尾原さんのような人がリーダーであれば、部下やチームの人たちの偏愛性や強みを見いだせるかもしれないけれど、実際はそうではない。そもそも、チーム内の化学反応やハーモニーなどを重視するのがリーダーの役割だとするならば、そこはストレングスファインダーのデータを見て、AIの方がよっぽど正しい判断をするでしょう。AI時代のリーダー性ってどんなところにあるのでしょうか。
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構成=谷本有香 写真=藤井さおり

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