キャリア・教育

2017.11.22 18:00

AI時代こそ、コンフォートゾーンを出よ|IT評論家 尾原和啓

(左)IT評論家 尾原和啓氏(右)Forbes JAPAN Web編集長 谷本有香


尾原:AIは、誰もがわかる効率化できるものを、はるかに早い速度で効率化してくれる。しかし、人間は効率化することだけじゃないですよね。
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答えはこっちの方が良いけど、自分は好きだからこっちにいくという感情の塊だし、今までと違うとか、人と違うとか差分に人は快を感じるから、そこがビジネスになってくる。皆でワイワイやっていて、熱狂を生んで人を引きつけていくっていう熱量のところが、AIにはまだできていないところで、だからこそ、そこがリーダーにとって、1番大事なのかなと思います。

尾原:もう1つ大切なのが、たった1人の人間が踊ればみんなが踊る、ということではだめなんです。僕のやり方、強みだけで踊っているだけだと、ゴレンジャー全24話のうち3話くらいは勝てるけど、残りの21話は勝てないんです。そこでは、キレンジャーやアカレンジャーの強みじゃないと勝てなかったりする。変化の時代だからこそ、そういうことがたくさん出てくる。そうしておかないと、勝ち続けられないんです。

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谷本:人の強みを活かす時代になったときに、たとえば時給を決める際、アカレンジャー的な人の時給が1番高く設定されがちじゃないですか。つまり、リーダーシップを取る人は君だよね、という判断のもとに。そのとき、時給換算して低く見積られるタイプの人間は、チーム以外、単体で社会への貢献性を考えるとき、割を食うことになりませんか。

尾原:お金という意味では、アカレンジャーというのは、一番活躍するシーンの中で1番リスクを取っている人だから、リスク手当は取った方がいい。モモレンジャーもいつも人質になるからリスク手当をもらった方がいい。一方で、キレンジャーは、元SMAPでいうと草なぎくんだと思う。キムタクとか中居くんが出演費もらうかもしれないけど、草なぎくんはキャラクターとして立っているから、実はCMは多い。黄はタイアップ商品とか、その個性にあった稼ぎ方がある。

あとは、お金だけが大事ですかね? ということだと思うんです。報酬というのは、金銭的報酬以外にも感情報酬であったり、肩書き報酬であったり、そもそも成長が一番の報酬だったりもします。自分がそういうポジションになればなるほど、自分の個性ができる。

「金銭報酬以外の報酬は何があると幸せなんだろう」という考えを持った方がいいし、そこを研ぎ澄ましておくと、後々金銭報酬が付いてくることもあるんです。

谷本:そんな中で、強みを活かせるような教育があるとすれば、それはどんな教育だと思いますか?

尾原:東京港区に麻布山幼稚園というところがあって、そこの先生がおっしゃっていたのは、「子どもが冒険の一歩を踏み出した時に、それを誇らしく思い、そこを仲立ちします」と。「we are proud of your stepping out of the comfort zone」ということなんです。

ものに溢れている現代で、何もしない方が安心で快適なコンフォートゾーン、そこから出ることは不安があるからつい留まりつづけてまう。でも、変化にさらされなければ大きな成長は望めない。だからこそ保育師は、子供が新しいコトを成し遂げた時ではなく、コンフォートゾーンを出た瞬間を捉えて褒める。あなたと私という他者の関係ではなく、あなたの冒険を私のこととして誇らしく思う。だから園児達は外に踏み出てもまだ自分達はコミュニティの中にいると安心して冒険にでられる。

チャレンジする組織に1番大事なことは、心理的絶対安心性とグーグルなどで今いわれています。これは何かというと、失敗しても受け止めてもらえる。be proud ofということによって、あなたの冒険は私にとって誇らしいから、どんどん外に出て生きなさいという風になれること。

コンフォートゾーンを抜け出す仕掛けというのが、自分の中での偏愛であったり、仲間の中で強みを発揮できることです。なぜなら、好きなことをしていると、気づいたときには先へ進んでいるから。それを理解することで、比較的stepping outしやすくなる。stepping outしたときには周りがstepping outしたこと自体を上から褒めるのではなくて、誇りに思う。それがすごく大事だと思います。

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尾原和啓(おばら・かずひろ)◎I執筆・IT批評家。京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、グーグル、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を歴任。現在13職目 、シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。近著『モチベーション革命』はアマゾン ビジネス書1位。

構成=谷本有香 写真=藤井さおり

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