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2017.10.25

米MITが200億円注ぐ「大学発ベンチャー」育成の本気度

MikeDotta / shutterstock.com

マサチューセッツ工科大学(MIT)発のスタートアップ支援機関「エンジン」(The Engine)が、第一弾の投資先7社を発表した。

昨年10月に立ち上がった同機関の「エンジン・ファンド」(The Engine Fund)は、大手ベンチャーキャピタルにはハイリスクと見なされて敬遠されることが多い、高難度の技術を要するスタートアップへの投資を行うベンチャーファンドだ。

「偉大な発明の多くは通常のVCの投資の対象になりません。我々MITがその問題を解決します」と、エンジンCEOのケイティ・レイは語る。

今回、投資対象に選ばれたのは、非化石エネルギーをより安価に貯蔵する再生エネルギーのスタートアップ「Baseload Renewables」、宇宙インフラとしての高速データ伝送技術を開発する「Analytical Space」、ロボット工学を用いて次世代AIの開発に取り組む「iSee」、超音波治療のプラットフォームを提供する「Suono Bio」、遺伝子操作細胞の品質向上に取り組む「Kyptopen」、独自の膜ろ過システムを開発する「Via Separations」、そして匂いのデジタル化に挑む「C2Sense」の7社だ。

6社がMITの研究者によるスタートアップで、残りの1社はハーバード大学発だ。

エンジン・ファンドの運用資金は当初、約1億5000万ドル(約169億円)と目されていたが、レイによると2億ドル(約225億円)に上るという。MITが2500万ドル(約28億円)を出資し、残りは外部投資家から調達した。エンジンは投資の他、スタートアップのためのコワーキングスペース、アクセラレータプログラム、ネットワークを提供する。

この数カ月以内に、エンジンはC2Senseの資金調達をリードし、ドリームインキュベータやPropel(x) Investorなどと共同で320万ドル(約3.6億円)を出資した。C2Senseはガスのセンサーを開発・販売するスタートアップで、MIT化学学部の元研究員ジャン・シュノアと同学部教授のティモシー・スワガーが2014年に創業。ほぼすべての化合物を検知できるセンシング技術により匂いをデータ化し、IoTとの連携を可能にするプラットフォームを提供する。

CEOのシュノアによると、同社は今後、エンジンのラボを使ってプロトタイプの作成を行うと同時に、獲得した資金でスタッフを採用し、食品貯蔵や鶏肉産業をはじめとする新市場への参入を図る。C2Senseとエンジンが早い段階で相互理解を深めることができたのは、両者が同じMITのネットワークに属していることが大きいとシュノアは考えている。

「C2Senseは大きな可能性を秘めていますが、目標を実現するためには、技術的難関に対する理解があり、スタートアップの立ち上げ経験があり、多方面のサポートを提供できる投資家の支援が不可欠です」
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編集=海田恭子

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