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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

photograph by Donggyu Kim (Nacasa&Partners)

農家の経験頼みだった肥料や農薬量を、ICT農機が自動的に弾き出す。生産力や生育状況の「見える化」が、高齢化で窮地の日本の農業の景色を塗り替える。


白鷲が一羽、少し遠くの方で餌を優雅についばんでいる。梅雨の晴れ間が空に広がった6月末のある日、千葉県木更津市郊外の田園地帯では、朝露に濡れた稲の株が、太陽の光を受けて一斉に青々と光っていた。

この圃場(ほじょう)にヤンマーヘリ&アグリの数名の担当者が到着したのは、徐々に気温が上がり始めた午前9時前のことだった。彼らが農道に停めた車の荷室から黒いドローンを取り出すと、周囲で様子を見ていた関係者の間で軽くどよめきが起こる。

近くの同社事務所から来た担当者の斎藤修が言った。

「今日はこのドローンを飛ばして、22町歩分の圃場をセンシングしていきます」

彼らが行おうとしているのは、その言葉通りドローンによる圃場の調査である。今年4月から同社がコニカミノルタと共同で事業化したサービスで、空から撮影した画像を分析して圃場の土壌や育成の状況を把握するものだ。

操縦の担当者が本体のスイッチを押すと、8枚のプロペラが蜂の羽音のような音を立て始めた。静かな田園地帯にドローンが飛び上がり、圃場の上空を往復し始める。その音に驚いたのか、先ほどの白鷲が大きく羽ばたき、広々とした水田の上を低空で飛んでいった。

「このドローンにはコニカミノルタが開発したカメラが付いていて、田んぼの一枚一枚をセンシングして葉色マップ化できるんです。分かるのは稲の葉色や茎数、窒素の吸収量。それらのデータを分析することで、稲の生育具合と品質に関係するタンパク質の含有量を割り出す仕組みです」

撮影されたデータはすぐにコニカミノルタへ送られ、5日以内に依頼主である農家に結果が報告される。それから2、3日後、農家はマップをもとに生育の悪い箇所に肥料を足す「追肥作業」を行う。その際も肥料散布用の無人ヘリが使用され、圃場の上を飛ぶだけで自動的に肥料の濃淡が調節されるという。

「ドローンは30メートルの高度を保って、幅15メートルずつを3センチメートル角で圃場を測定していきます。測定する時期は稲の品種によって異なりますが、出穂する25日ほど前に行います」

コニカミノルタとヤンマーヘリ&アグリがこのサービスの実証実験を開始したのは、いまから遡ること3年前の2014年のことだ。

実験は農水省のプロジェクトで、山形県の大規模農園「鶴岡グリーンファーム」で行われた。プロジェクト名は「ISSA山形」。両社は山形大学の農学部と組み、装置や分析手法の研究を3年間にわたって続けた。

両社がこうした共同研究を主導した背景には、日本の農業の抱えるいくつかの危機感があった。一つは農家の担い手の減少と60歳以上が80%を超えるという高齢化の問題。もう一つは農地の集約化が進むなかで、一農家が管理する圃場の巨大化にどう対応するかという課題だ。二つの課題は一体のもので、農業者の減少が見込まれるなか、農地の集約化が自ずと進んでいるという現状がある。

事業の責任者の一人で、コニカミノルタ「精密農業チーム」の星野康は話す。

「これまでは一人の農家さんが管理していたのは、せいぜい10圃場くらいのものでした。それが100や200ヘクタールを管理するのが、もはや当たり前の時代になりつつあります。担い手の減少と農地の大規模化に対応する省力化、効率化は、日本の農業における何よりの課題です」

さらに近年の気象条件の変化も相まって、米の収量や品質にばらつきが見られるようになってきたことも、彼らの危機感を大きなものとした。

文=稲泉 連 イラストレーション=ムティ(フォリオアート)

 

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