そのブーメランを、仏高級ブランドのシャネルが1325ドル(約15万円)で販売していることをご存知だろうか? 「泥つきジーンズ」を425ドル(約4万7000円)で販売し物議を醸した米百貨店ノードストロームに続き、シャネルもまた、値段があまりも高い商品を販売したことで世間の笑い物になっている。
発端は、メーキャップアーティストのジェフリー・スターがインスタグラムに投稿したシャネル製ブーメランの画像だった。米ファッション誌ウィメンズ・ウエア・デーリー(WWD)は、この投稿から「白熱した議論」が始まったと指摘している。その後議論はツイッターに波及し、いまだに広がり続けている。
ノードストロームの場合と同様、問題になっているのは「文化の私物化」だ。汗水流して肉体労働をする米国人のイメージを利用して金儲けをたくらんだノードストロームに対し、シャネルの場合は何千年も前から狩りや戦いにブーメランを使ってきたオーストラリアのアボリジニやトレス海峡諸島民といった先住民がその対象だった。
偽物の泥つきジーンズも、しゃれた木材・樹脂製ブーメランも、オリジナルをばかにするものであり、真正さが完全に欠けている。高級品は常に特権的なイメージを持つが、仕事道具をおしゃれにアレンジした商品ほど気分を害するものはないだろう。
シャネルはノードストロームの騒動で過敏になっていたのだろう。即座に次のような声明を発表した。
「シャネルはあらゆる文化の尊重に熱心に取り組んでおり、一部の方々の気分を害した可能性があることは非常に遺憾です。この商品は、世界のその他の地域でのレジャー活動に着想を得たもので、アボリジニやトレス海峡諸島民のコミュニティー、文化物としてのブーメランの重要性を軽視しようとしたものではありません」
これは全面的な謝罪とは言えず、こうしたやや自己弁護的な説明は(たとえそれが正しくとも)控えた方がよかっただろう。ただ、シャネルが迅速に動いたことには違いない。