高級ブランドが進むべき道は
高級ブランドが相次いで公の場でバッシングを受けた形だが、これはブランド各社が考慮すべき何らかのトレンドが現在進行中であることを示しているのだろうか。
世界各地では現在、ポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭している。ポピュリズム運動は、よそ者と見なした人間を攻撃する一方、その怒りの矛先は特権階級にも向けられる。米金融業界を批判したバーニー・サンダース上院議員や、一般市民に力を与えると約束したドナルド・トランプ大統領に投票した有権者は、裕福さをひけらかす人々に嫌気が差した消費者でもあったかもしれない。
この動きが今後も継続し、激しさを増すと、ブランド各社は大きな重圧を受けることになる。数日間批判にさらされるだけならば、シャネルやノードストロームにとって痛手とはならない。バッシング元は自社の対象購買層ではないからだ。
しかし、このようなネガティブな注目を浴び続けると、裕福な消費者層の行動にも影響が出る。自分に恥をかかせるような商品など買いたくはないだろう。
実際にこの傾向を裏付ける証拠がある。年収20万ドル(約2200万円)以上の米消費者の間で今最も人気の自動車は、ロールス・ロイスやメルセデス・ベンツ、BMW、アウディではなく、フォードのピックアップトラック「F150」だという。USAトゥデー紙によると、このような変化は10年前から起きている。
最も有効な防衛策は、真正さへの回帰だ。高級ブランド6社を調査したスイス・サンガレン大学の研究者らは、「経済界の危機やスキャンダルは、高級品の消費行動を変える。現在、高級品の顧客は真正さ、目的、そして持続可能性を求めている」との結論に至っている。
これは、ノードストロームなどの高級品小売業やシャネルなどの高級ブランドが進むべき道を示している。文化を私物化するのではなく、保全するのだ。
アボリジニの職人を探して、高級だが真正な素材を使い、限られた数のブーメランを手作業で製作する。これを、特定の先住民コミュニティーの利益となるような方法で行う。
耐久性と持続可能性の両方に優れた素材を使えば、高い芸術性と職人技をもって作られた商品に途方もない高値を付け、ファッション意識の高い富裕層に向けて堂々と販売できる。