4. 一般公開
TIFFは一般にも公開されており、誰でも上映作を鑑賞することができるが、これはあまり知られていない。例としてカンヌ国際映画祭では、基本的に上映作品は関係者以外に公開されないが、TIFFは一般人でもほぼ全ての作品を鑑賞することが可能であり、開かれた映画祭になっている。しかも学生料金は500円〜。役者や監督を交えた舞台挨拶など関係者以外も楽しめる仕掛けも多く、映画鑑賞の敷居を低くしている。
5. 次世代の発掘
また、TIFFに若手の映画制作者を発掘する機能があるのも一般には知られていない。『君の名は。』や『シン・ゴジラ』などの日本の優れたヒット映画を海外に紹介する一方で、優れた実力を持つ監督作品を国内外に紹介する機能も持っているのだ。
国内で最も権威があるTIFFで自らの作品が上映されることは、クリエーターにとって名誉とされている。エントリーされる作品が1,500作を超える中、日本映画は10作程度しか入選しない狭き門ではあるが、大手企業でなくとも応募ができる貴重な機会となっている。
実際にTIFFで紹介された監督は国際的に羽ばたくことが多い。アカデミー賞監督賞を2年連続で受賞したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、今年のカンヌ国際映画祭で受賞した深田晃司監督を紹介するなどの功績を残している。
6. 『雪女』
そんな中、今年のTIFFで最も注目された日本映画は杉野希妃監督・主演の『雪女』だ。杉野は若干32歳にしてコンペティション部門に選ばれた監督兼主演を務める才人で、『雪女』は業界誌大手の「SCREEN INTERNATIONAL」及び「VARIETY」にも紹介され関係者の注目が集まった。この作品はクラウドファンディングを行なっており、そのプラットフォーム「モーションギャラリー」から予告編を視聴することが可能だ。
7. 今後の展望
TIFFは日本のコンテンツビジネスは欠かせない存在であり、日本の映像産業の未来を担っていると言っても過言ではない。現在、日本の映画産業は国内でほとんど成長していないが、国際的に映像産業は成長しており、日本映画は海外での展開にこそ活路がある(第1回記事参照)。
この映画祭が次世代の才能を見出し、国内外に良質なコンテンツを紹介し続けることが、日本の映像産業を長期的に成長させるだろう。