ギリノフは、「常軌を逸した測定値が出ても、自分で何の問題も感じないなら恐らく本当に問題はない。だが、本格的に競技を行っているアスリートがトレーニング中の心拍数を正確に把握したい場合には、チェストバンド式のモニターを使った方がいいだろう」と話している。
ギリノフは今後、腕や脚を動かす運動をした場合の測定値について調べたその後の実験結果をまとめ、新たな論文を発表する予定だ。こうした運動をした場合には精度が大幅に落ちるが、それは手首に装着した活動量計のバンドが緩むことが原因ではないかと推測している。
「医療機器ではない」
一方、フィットビットの広報担当者は声明を発表、「医療機器としての使用を意図したものではない」と強調している。60人以上を集めて独自に行った「社内での詳細な調査」から、フィットビットの「ピュアパルス」光学心拍計技術は「リストバンド型の活動量計に求められる業界基準を満たしていることが確認された」という。
この社内調査の結果は査読のある科学雑誌に掲載されたものではないため、われわれはフィットビットの説明を信用するしかない。その調査結果では、測定値の平均絶対誤差は1分当たり6回未満(誤差率は平均6%未満、ギリノフらの示した16%の約3分の1)とされている。
フィットビットの心拍数データの精度が疑問視されるのは、今回が初めてではない。今年1月には同社に対する集団訴訟が提起され、カリフォルニア州立技術専門大学の研究者2人に対し、「フィットビット・チャージ HR」を含む3機種の精度に関する調査が委託された。
同大学の研究チームは、「フィットビットの心拍数データと心電図で測定された心拍数には、極めて弱い相関性がみられるにとどまった」との調査結果を明らかにした。この研究者たちはギリノフらと異なり、調査結果から得るものが多い法律事務所から報酬を受け取った上で、調査を行っている。