ところで東京藝大の学生がどれほどのエリートかご存知だろうか。
大学受験の最難関といえば東京大学の理科三類が有名だ。平成27年度の志願倍率は4.8倍。全国の秀才が集ってのこの倍率だからかなり狭き門だ。しかし、東京藝大はそれ以上に狭き門なのである。
藝大のなかでも最難関といわれる絵画科の志願倍率はなんと17.9倍。藝大全体の平均をとっても7.5倍もある。しかも勉強ができれば入れるというわけではない。才能があるのは当たり前。才能があっても三浪くらいは当たり前というのだから凄まじい。
それに加えて試験問題もわけがわからない。たとえばこんなふうだ。
「問題一、自分の仮面をつくりなさい」。問題にはこんな注釈もついている。「※総合実技2日目で、各自制作した仮面を装着してもらいます」
そして問題はこう続く。
「解答用紙に、仮面を装着した時のつぶやきを100字以内で書きなさい」。そこにまた注釈がついていて、「※総合実技2日目で係の者が読み上げます」
・・・・・・なんなんだ、これは。
ビジネスの世界ではときおり時代の先端を行く企業の採用試験問題が話題になったりすることがある。いま手元に『ビル・ゲイツの面接試験』ウィリアム・パウンドストーン(青土社)という古い本があるのだが、この中から実際にマイクロソフトで出たという問題を紹介するとたとえばこんなふうだ。
「秤を使わないでジェット機の重さを量るとしたら、どうしますか」
「車のドアの鍵を開けるには、鍵はどちらに回るのがいいでしょう」
けっして簡単な問題ではないが、この本には解答も掲載されている。ということは、少なくとも答えはあるということだ。一方、東京藝大の試験問題にはそもそも正答がない。まさに秀才が束になっても太刀打ちできないような試験をクリアできたものだけが、晴れて藝大生となることができるのである。
では、そんな狭き門をくぐり抜けた藝大生とはいかなる人種なのか。
音楽環境創造科のある男子学生は、楽器を荒川に沈めようとしているという。沈めて錆付いた楽器を引き上げて展示したり演奏したりしたいのだが、企画書を持っていても国土交通省から許可が下りないと悩んでいる。
先端芸術表現科のある女子学生は、アスファルトの駐車場の上にアスファルトでつくった車を置いてみたという。タイヤもアスファルト製で、押せばちゃんと走ると嬉しそうに胸を張る。
・・・・・・なんなんだ、これは。あなたの頭はついて来ることが出来ているだろうか?