しかし、LeEcoの名前はまだ知られていないかもしれない。
LeEcoについて欧米で知られていることは、米テレビメーカーVizioを20億ドル(約2,072億円)で買収したことだ。しかしLeEcoは中国ではスマホ、テレビ、スポーツ、映画、EC、そしてEVの分野でも積極的に動いている。ジア・ユエティン(賈躍亭)CEOはアピール能力に長けた人物としても知られている。
中国版ネットフリックス
LeEcoは2004年に動画ストリーミングサイト運営会社LeTV.comとして設立された。その後、2010年の深セン証券取引所でのIPOを経て、中国の動画ストリーミングサービス最大手の一社に成長、“中国のネットフリックス”と呼ばれるようになった。同社のメンバーの中には、「ネットフリックスこそ、LeTVのパクリだ」と豪語する者もいる。
そして2016年1月、ジアは会社の名称をLeTV からLeEco に変更することを発表(これは“Le Ecosystem”を短縮したものだという)。事業体制を一気に多角化することを宣言した。同社は今、中国とインドでスマホを生産し、液晶テレビ分野では世界出荷で3位に浮上するとの見方も出ている。
ファーウェイやシャオミ、テンセントらとは違う道をLeEcoは歩んでいる。同社は、自動車やナビゲーション技術についてノウハウを持たないにも関わらず、自動運転EVスポーツカーのブランドを立ち上げた。
時価総額は1.3兆円以上
LeEcoの時価総額は130億ドル(約1兆3,500億円)に達し、中国の有名テック企業の多くを上回る。収益のほとんどは、LeEcoのテレビやスマートフォンのコンテンツビジネスからもたらされている。
LeEcoは欧米でも勢力を拡大しようとしており、今年に入って2つの買収に打って出た。一つ目は、Vizioの買収だ。Vizioは2005年に設立された米テレビメーカーで、一時期は米国第2位のブランドだった。米国人に信頼されるブランド力は、LeEcoの米国展開の大きな足掛かりとなるだろう。
LeEcoはVisioの買収により技術、マーケティングのノウハウとともに、米国の数百万世帯へのアクセスを手に入れる。同社はハリウッドにも目を向けている。既に中国最大の映画製作配信会社Le Vision picturesを所有しているが、9月にパラマウントピクチャーズの元社長アダム・グッドマンの制作会社であるDichotomy Creative Groupを傘下に収めた。
LeEcoはコンテンツを非常によく理解しており、その専門性を生かして、欧米に攻め込むつもりだ。