7月1日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じたとおり、米10年債の利回りが1.385%という「史上最低水準」に達した。これほどの低水準は1790年2月以来のことだ。
なぜ10年債の利回りがそれほど重要なのか。FRB(米連邦準備制度理事会)は「フェデラルファンド金利(FF金利)」として知られる短期金利を設定している。現在のFF金利(誘導目標)は0.25%~0.50%。連邦準備銀行に預けられている準備預金(フェデラルリザーブ)を民間銀行同士で貸し借りする際の金利だ。FF金利は「金融緩和」または「金融引き締め」についてのFRBの意図を示すものとされている。
FRBが操作するFF金利とは対照的に、10年債の利回りは、世界各地の債券購入者(いわゆる債券自警団)の間での需要に大きく左右される。たとえばブレグジット決定後など、安全資産に資金が流れると買い圧力が債券価格を引き上げ、逆に利回りを低下させる。
高金利の時代はもはや過去
これまでで10年債の利回りが最も高かったのは1981年9月の15.82%。ポール・ボルカーFRB議長(当時)が、ジミー・カーター大統領(当時)政権時代からのインフレ率抑制を狙って、FF金利の誘導目標を20%に引き上げた時だった。1980年12月には、プライムレートは21.5%に上昇していた(現在は3.50%)。
年配の投資家たちは、1981年の高い貯蓄金利を覚えている。だがこれは荒唐無稽な話だった。1980年のインフレ率は13.5%、対して現在のコアインフレ率は2.2%。連邦税の限界税率は現在の39.6%に対し、当時は70%だった。所得税の夫婦合算申告の場合は課税所得6万ドル(約625万円、2016年の価値で15万8,572ドル=約1651万円)、独身者申告の場合課税所得3万ドル(約312万円、現在の価値で7万9,286ドル=約825万円)で税率が54%だった。つまり当時は利回りが高くても、税やインフレ率を差し引いて調整すれば、損益ゼロなら幸運というところだったのだ。