海外、とりわけ新興国への投資はカントリーリスクが気になるところだが、そもそも国が破綻するリスクは日本の中小企業より低い。
「むしろ、リスクは現地の提携業者によって大きく変わります。しっかりしたパートナーと組めばリスクは格段に小さくなります」
社員が現地に出向いてデューデリジェンスをしっかりと行うなど、クラウドクレジットではパートナーとなる債権回収業者や金融業者の選定に慎重を期している。日本に資金の出し手がいると知って、向こうからアプローチしてくる業者もいるが、「そういうケースではほとんど交渉が成立しません。基本的には私たちがこれと選んだ業者にこちらから接触します」。欧米のベンチャーキャピタルが投資している企業のリストから選んだり、世界各国で開催されるフィンテック関連のカンファレンスに参加している業者にその場で声を掛けたりしているという。
そうやって見つけたパートナーの一つが、カメルーンのOvamba(オバンバ)社だ。同社と提携して今年立ち上げた「カメルーン中小企業支援プロジェクト」では、オバンバ社が行うカメルーン国内の中小事業者に対するトレードファイナンスに参加する。タイヤやガラス、医薬品など融資先が扱っている商品在庫を動産担保とした融資で、資金はクラウドクレジットのエストニア子会社を通じて、モーリシャスにあるオバンバ社の現地法人に貸し付ける。例えば、「カメルーン中小企業支援プロジェクト2号」の場合、期待利回りは12.3%だ。
モーリシャスは“インド洋の香港”とも呼ばれ、インドやアフリカ市場をターゲットとしたオフショア会社が多数登録されている。多くの国と二重課税回避協定や投資促進保護協定を結んでいるほか、保護セル会社(Protected Cell Company、PCC)の設立も可能だ。
PCCは法人本体の資本と投資家が保有するセル会社の資本を分離できる仕組みで、「仮に法人本体が倒産しても、投資家のセル資本は保全される」。投資家に対する安全装置の機能を果たすものだ。
「PCCの仕組みはオバンバ社との取引で初めて知りましたが、実際に世界で活動をしてみないと、税制や投資制度のダイナミックな変化はわかりません」
そう語る杉山は現在、ケニアでのパートナー候補企業との詰めの交渉を行っている。
杉山智行◎クラウドクレジット代表取締役CEO。2005年東大法学部卒業後、大和証券SMBCを経てロイズ銀行東京支店に入行し、資金部長、運用子会社の日本代表および運用責任者。13年クラウドクレジットを設立。