一部の人は、2,000億ドルもの現金および現金同等物を持つアップルであれば、必要なテクノロジーを簡単に買うことができると主張するかもしれないが、そう簡単な話ではない。これらの技術の開発には何十年と掛かり、しっかりと技術を理解しているエンジニアは世界中を探しても多くない。さらには、アップルの社内文化は最先端テクノロジーを研究するのに不向きだ。
大いなる転身に向かうアップル
しかし、筆者はかつて栄華を誇ったアップルがこのまま凋落すると指摘しているのではない。アップルは今でも素晴らしい会社であることに変わりはないが、今後10年間は、過去に比べて環境がかなり厳しくなるだろう。デザインやエンジニアリングの会社が、ある日突然テクノロジー企業に生まれ変わることなど到底不可能だからだ。
アップルは徹底した秘密主義で知られるが、デザインやエンジニアリングの会社であればそうあって然るべきだ。新型iPhoneのデザインが発売前に少し漏れるだけでもアップルの優位性が毀損してしまう重大事だからだ。一方で、最先端テクノロジーを開発するのであれば、他社との協調などよりオープンな姿勢が求められる。
だからといってアップルがテクノロジー企業に変貌する可能性が皆無なわけではない。例えば、最近ではIBMと提携し、ワトソンなどIBMが持つ先端テクノロジーを活用したアプリ開発を行うことを発表した。今後、IBM以外の企業とも同様の提携を進めることは容易に想像でき、革新的な製品の開発につながるかもしれない。トヨタが証明して見せたように、優れた製品を開発できることは、大きな意味を持つのだ。
それでも、過去10年間続いてきたアップルによる独占は終わりを迎えるだろう。この先10年で市場をリードするのは、これまでにない可能性を秘めた革新的なテクノロジーを開発した企業であり、それがアップルでないことだけは確かだ。