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文化放送プロデューサーㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

Photo=Ran Iwasawa

「ハーバードの名前にいまや価値なんてない!」なんて言ったら、こちらのオツムの中身を疑われてしまうだろうか。もちろんここでいうハーバードとは、あの世界最高峰に君臨する大学のことではない。本のタイトルのことだ。

最近タイトルに「ハーバード」を冠した本がやたらと目につく。「ハーバード式〇〇」とか「ハーバード流の〇〇」とか。本の世界ではいまやハーバードの価値はデフレもいいところだ。

だから『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー著 熊谷淳子訳(早川書房)というタイトルを書店で見かけ、手に取るのをためらったとしても無理もない。あなたがマイケル・サンデル教授の『ハーバード白熱教室講義録』に感銘を受け(そういえば“白熱”も一時は出版界のバズワードだった)その後、柳の下のドジョウを狙って出版された何冊ものハーバード本にがっかりさせられた経験をお持ちであればなおさら手に取る気にはなれないはずだ。

だがこの『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』をその手の安易な発想の本と一緒にしてしまうのは早計に過ぎる。はっきりいってこの本は巷にあふれるハーバードブランド便乗本とはモノが違う。多くの学びが得られる優れた一冊だ。

マイケル・ピュエット教授は中国史の専門家で、ハーバードの一般学生に向けた学部授業で「古代中国の倫理学と政治理論」を教えている。孔子や老子、孟子などの教えについて学ぶこの授業は、経済学入門やコンピュータ科学入門に次いで、学内で三番目の人気を誇るという。

講義は「白熱教室」で知られるサンダースシアターで行われる。700人を超える聴衆は、言うまでもなく各国から集まった世界一優秀な学生たちだ。彼らを前にした最初の授業で、教授は毎年必ずこう約束をするという。

「中国哲学と真摯に向き合うなら、きっときみの人生は変わる!」

どうだろうか?これだけでもこの講義を受けたい!と思うのではないだろうか。

講義はのっけから刺激的だ。彼は学生たちにこう問いかける。

“多くの人が自分は特別な個人だと思っていて、おのれのことを知っていて当然だと考えている。自分は本来の自分であるべきで、心の声に耳を傾け、自分にふさわしい生き方をすべきだと。しかし、人生を向上させるためのこの信念が、実際には枷になっているとしたら?”

こんなふうに学生たちの固定観念を揺さぶった後、さらにこう続けるのだ。

“哲学というと抽象的な概念とみなされることが多いが、古代中国の思想家たちは、より具体的で平凡な日々の暮らしの場面を通して教えを説いた。なぜならこうした日常レベルからこそより大きな変化が生じ、充実した人生がはじまると考えていたからだ”

文=首藤淳哉

 

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