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(Photo by Lintao Zhang/Getty Images)

5月12日、アップルが中国版ウーバー「滴滴出行(ディディ・チューシン)」に10億ドル(約1,090億円)を出資することが報じられ、関係者に衝撃が走った。

これまでアップルは同社の自動車関連の取り組みについて、ほとんど何も明かして来なかった。それが急に中国企業への出資を決めたことは、突飛な戦略にも映る。アップルがスタートアップ企業に出資した例はほとんどなく、実績ある企業を買収してその製品や人脈をアップル社内に取り込むことを好んだ。

今回の滴滴への出資からはアップルの自動運転カー市場参入のための戦略が見えてくる。かつてはSFの世界の話だった自動運転カーは、徐々に現実のものになりつつある。BI Intelligenceのリポートでは、2020年までに、1,000万台の自動運転車が道路を走っている可能性もあるという。

アップルの支出状況を分析してきたアナリスト、Neil Cybartによれば、同社は2016年に研究開発に100億ドル(約1兆900億円)以上を費やす予定だ。この数字は2015年と比べると30%の増加で、iPadが登場した2010年の20億ドル(約2,180億円)と比べても、飛躍的な増加だ。

Cybartの分析では2014年にも研究開発費は前年比でかなり増加した。2014年はアップルが、「タイタン」と呼ばれる自動車開発プロジェクトを開始したとささやかれ始めた前の年にあたる。その研究開発が、今まさに行われているのだ。

アップルは滴滴から、世界最大規模の自動運転カーのテストグラウンドの提供を受け、ドライバーの運転パターンや交通データを入手する。さらに、そこで動作するソフトウェアの調整も行う。自動運転カーの開発競争で勝敗を決めるのは、ハードウェアではなくソフトウェアだからだ。

車の運転に要求される細やかな操作を考えれば、自動運転カーの実現には非常に優秀なプログラムが必要なことは明らかだ。その実用化には、膨大な時間と、大量のデータが必要になる。自動車市場が急拡大を続ける中国は、アップルのこの市場への参入にあたり、非常に有意義な実験場となるだろう。

アップルの滴滴への出資は、中国での同社の存在感の回復や決済サービスのApple Payの普及など、他の思惑があることも否定できない。しかし、いつか今回の出資が、自動運転カーの歴史を語る上で、重大な分岐点だったと見られる日が来るかもしれない。

編集=上田裕資

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