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2016.05.11 10:00

日常に「宝の山」は眠る 京都府・与謝野町の挑戦

[左より]エムテド代表で、与謝野町クリエイティブ・ディレクターの田子學、京都醸造共同創業者のベンジャミン・ファルク、与謝野町長の山添藤真。東京国際フォーラムにて。(Photograph by Peter Stember)


「宝の山」は日常に埋もれている
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2015年、町内の二つの圃場に29種のホップが植えられた。当初はイギリス種の成長が良くなく、心配するものもいたが、ゴールデンウィークに入ると、「アメリカ種がすごいことになっている」という連絡が入った。見に行くと、急速に伸びている。町長たちはまるでつきっきりになるように圃場に通い出したのだ。

さらに、外国人の仲間が増える。アメリカ人のクリス・ヘインジ、カナダ人のポール・スピード、ウェールズ出身のベンジャミン・ファルクの3人は、京都市内で「京都醸造」を運営する。青森県で英語を教えていたことから3人は出会い、大好きな京都に移住した。ベンジャミンが言う。

「京都は職人の街です。日本酒、ワイン、コーヒーと、こだわりをもってつくっている。クラフトビールも職人の世界だから、どうしても京都で醸造をやりたかったんです」
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輸入ホップと違い、フレッシュなものは繊細な香りがあるという。香りにはスパイスや松に近いものもあれば、シトラスや苦みが強いものがある。当然、醸造家としてはフレッシュなものを使いたい。

与謝野町は、初年度から栽培に成功し、7月から9月にかけて収穫を行った。そして、京都醸造は加工をせずに摘みたてのホップを使い、1,500リットルのビールを完成させたのである。

10月、関東と関西で予約注文が開始されると、山添のもとに連絡が入った。

「3時間で完売しました」

11月には、与謝野町の人々が、3日間限定でカフェ・パブをオープンした。そこで、町内初の開栓式が催されたのだ。のべ500人が訪れて、口々にこんな感想を述べたという。

「こんなことができるんだ」

このポテンシャルこそ、藤原が言う「宝の山」だ。改めて藤原はこう言う。

「一年でホップの房を実らせるだけの技術を、地元の農家は日常の当たり前の仕事の中で身につけているのです。それをすごいことだと気づいていないだけ。機織りの技術もそうです。地方活性化だからといって背伸びをする必要はありません。宝の山は地元の人々の日常の仕事の中に埋もれているのです」

与謝野町が良質なホップの産地になり、そして町内に醸造会社が立ち上がる。それが山添が目指すプランだ。完売したビールは、こう名付けられていた。『与謝野の挑戦』。外の目が入るだけで、町は自分たちの強みに気づいたのだ。

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山添藤真◎1981年、京都府生まれ。高校卒業後、渡仏。2008年フランス国立社会科学高等研究院パリ校2年次修了。10年与謝野町議会議員選挙初当選、14年与謝野町長に就任。

田子學◎東京造形大学卒業。東芝デザインセンターで製品デザイン開発に携わる。リアル・フリートのデザインマネジメント責任者を経て、2008年エムテドを創業。幅広い産業分野で活躍。

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(Photograph by Ryosuke Iwamoto)

Yosano-hop
日本ビアジャーナリスト協会代表、藤原ヒロユキは、国際ビアジャッジとして、ワールドビアカップなどの審査員も務める。妻の実家が与謝野町にあり、30年行き来する。近い将来、与謝野町に移住するつもりだ。
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[左]町内の二つの圃場に29種のホップが植えられた。アメリカ種が急速に伸び、一年でホップの実を実らせた。
[右]夏に収穫期を迎えたホップの実。

Kyoto Brewing
京都醸造◎ウェールズ人のベンジャミン・ファルク、アメリカ人のクリス・ヘインジ、カナダ人のポール・スピードによって2015年に創業された京都・十条を拠点としたブリュワリー。
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[上]左からポール、クリス、ベンジャミン。工場には試飲スペースが併設されている(土日の午後のみ開放)。
[下]ビール「与謝野の挑戦」は3時間にて完売。


藤吉雅春 = 文 ピーター・ステンバー、砺波周平、岩本良介 = 写真

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