ブロックチェーンは、高速化と低い仲介コスト以外に、安全性と透明性の面でも優位に立っている。ビットコインを使った支払いは「プッシュ型」トランザクションであり、保有者が送金した場合にのみ、マネーはビットコイン・ウォレットを離れる。対照的なのがクレジットカード支払いを始めとする「プル型」トランザクション。
プル型の場合、消費者は販売企業や従業員、そこから情報を盗もうとするハッカーによって悪用されることはないと信頼した上で、自らのアカウントの“キー”を販売者に渡すリスクを伴う。共有帳簿テクノロジーは決済までの時間の短縮もできるため、現在、急激に拡大している個人情報の盗難防止にも役立つ可能性が高い。
透明性についても、これまでのところ、ハッカーの攻撃を撥ね除けてきたこのブロックチェーンには、誰が誰と、いつ、どのような資産の取引を行ったのかが記録されている。
さらに、クレジットカードなど旧来の金融決済手段と比較すると、ブロックチェーンの利用コストは格段に安い。米国内のクレジット取引とデビット取引に課している手数料は1〜3%であり、その総額は、米国内だけで年間700億ドルに達すると言われている。無論、一朝一夕で変わるわけではないが、ウェドブッシュ証券は、25年までにオンライン・カード取引の10%と個人による個人向け国際送金の20%で、ビットコインが使われると予想している。
世界銀行の推計によると、14年だけで、先進国の個人が開発途上国の家族に対する送金額は4,360億ドルに達している。こうした送金に対する高い手数料が、ビットコインの主要なターゲットになる。
共有帳簿を使ったアプローチは、多くの可能性を秘めている。銀行取引だけでなく、土地の所有権から特許、商標まであらゆる権利の記録と移転を簡素化することが可能であり、多数のホワイトカラー労働者と既存のソフトウェア企業が不要になる。
前出のデロイト会計事務所は、照合や監査などの業務にブロックチェーン・システムを利用する可能性を探っており、実現すると、大量の公認会計士の出番がなくなると考えられる。これは経済学者ジョセフ・シュンペーターが提唱した「創造的破壊」に他ならない。
ナスダックのグレイフェルドCEOは、「ブロックチェーン技術が確立されると、何が可能になるでしょうか。それは私たちの想像力を超えたものになるでしょう」と語っている。