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チェーン・ドットコムの創業者アダム・ルドウィン、ライアン・スミス、デボン・ガンドリー (photographs by Christian Peacock)

次の技術革新といま最も注目を集める「ブロックチェーン」。米ナスダックと未公開株式の取引決済をはじめた「チェーン」が描く今後とは。

2014年7月31日、金融界ではほぼ無名の存在だったChain.com(チェーン・ドットコム、以下チェーン)の創業者アダム・ルドウィン(33)、デボン・ガンドリー(34)、ライアン・スミス(29)が、電話会議システムを立ち上げると、2台のディスプレイにニューヨークにいる米ナスダック証券取引所の幹部5人が映し出された。

ジーンズをはいた出で立ちで会議に臨んだ3人は、スーツを着込んだナスダックの幹部に対し、ビットコインを支えているテクノロジー「ブロックチェーン」が金融サービス業界に何十年に一度という歴史的変化を引き起こし、金融機関の利益は落ち込み、従業員数も減少するが、数多くの新たな市場と機会を作り出すと確信していると語った。

ビットコインは、既存の体制に反発する人々の心を捉え、幸運に恵まれたわずかな投機家に富をもたらす暗号通貨と位置づけられることもあるが、実際には単なるアプリケーション・ソフトウェア。その基盤となっているのは、マネーをきわめて短時間に低コストかつ安全に移動させることを可能にする「ブロックチェーン」と呼ばれる分散型帳簿テクノロジーである。電話の登場が20世紀の世界経済を変えたように、ブロックチェーンが21世紀の世界経済を支えるインフラとなる可能性もある、と言うのだ。

米ウェドブッシュ証券・金融テクノロジー担当アナリストのジル・ローリアは、この新たなテクノロジーによって「存在を脅かされるか、経営効率の改善を余儀なくされる業界が現在、生み出している経済的付加価値は、米国の国内総生産(GDP)の20%程度にあたる3.6兆ドル前後」と推計している。なかでも、最も危うい立場が、金融サービス業界と同業界が生み出す巨額の利益だという。

チェーンは、ナスダックとの1回目の会議の直後、シリーズAファイナンスにより950万ドルを調達した。リード・インベスターは、コスラ・ベンチャーズのキース・ラボワであり、彼はチェーンの価値を3,600万ドルと“破格”の試算をした。しかし、現段階では、それを上回る1億ドル以上になっている。

3人は当時、ブロックチェーンを使った金融サービス業界の変革の先駆者となるのは、シリコンバレーの新興企業であろうか、それとも、ナスダックを始めとする強大な力を持つ既存の大手企業であろうか。その答えを探ろうとしていた。

ルドウィンはこう考えていた。「シリコンバレーで誕生したこの仮想通貨が、世界中で利用されるようになり、既存の金融大手は皆、その波に呑まれることになると、人々は信じたい」。しかし、事はそれほど単純ではない。何層にもわたるインフラを構築することが必要であり、消費者と規制当局がブロックチェーンを信頼に足るものと考えるようになることも欠かせない。

この2つの必要条件を考えると、既存の金融サービス大手企業は、先行者として、きわめて有利な立場にある。そこで、チェーンの3人は、大手との提携に自社の未来をかけることを決めた。

ローラ・シン = 文 クリスチャン・ピーコック = 写真 町田敦夫 = 翻訳

 

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