仮想通貨のビットコイン関連サービスが、その基盤技術となるブロックチェーンとともにフィンテックの急先鋒として注目を集めている。国内最大のビットコイン取引所であるbitFlyerは、果敢にルール作りに挑戦することで、この業界に新しい秩序をもたらそうとしている。2014年4月に国内初のビットコイン販売所(取引所)としてスタートしたbitFlyer。短期間で急速な成長を遂げ、1年半でユーザー数は10万人を超えている。月間取引量も約70億円と、国内最大のビットコイン総合プラットフォームへと育ってきた。仮想通貨取引に対する注目度の高さがうかがえる数字だが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。
サービス開始直後話題を集めたのがマウントゴックス事件だ。東京のビットコイン取引所のCEOによる横領事件で、多くのユーザーが資産を失った。この事件でビットコインの認知度は高まったが、イメージは失墜した。「法律の整備が重要だと思いました。金融サービス業としてきちんとしたルールの下で資産を運用し、最低限の消費者保護とセキュリティを確立しないと、社会からの信頼は得られません」と、代表取締役の加納裕三は言う。
スタートアップといえば法律の隙間をついてサービスを展開する企業が少なくないが、bitFlyerはロビー活動によって法制化に影響力を与えるという正攻法を選んだ。14年9月、一般社団法人日本価値記録事業者協会(JADA)を設立し、加納が代表理事に就任。ビットコイン関連事業社3 社とともに、業界のガイドラインを作りながら、仮想通貨に関する制度や規制について意見を発信し続けている。本年にも仮想通貨に関する法案が国会を通過する見込みだ。
法制化の肝となるのは消費者保護とイノベーションの両立だ。消費者保護のために取引所に求められる要件や、本人確認の方法等のルールを規定する必要がある一方で、自由な競争ができる環境も保ち、イノベーションを阻害しないようにしなければならない。
また、今後JADAは、ビットコインとは切っても切れない関係にあるブロックチェーン技術の啓蒙活動も行っていく予定。ブロックチェーンは、より安く、早く、簡単に信頼性の高いデータをやりとりできるため、今後の日本の新しいインフラになる可能性を秘めている。JADAは、仮想通貨とブロックチェーンという新しい基盤技術のルールを作ることで、業界の健全な成長を支えようとしている。
加納はゴールドマン・サックスでエンジニアとトレーダーの経験を積み、まさに「フィンテック」の「フィン(=Finance)」と「テック(=Technology)」両方の素養を持つ人間だ。技術を重視しつつ、業界のルール作りに関与するバランス感覚も、それゆえなのかもしれない。「フィンテックというと、サービスドリブンなものが多いですが、私はよいサービスを、技術で作るというところを大切にしています」。
ルールは壊すものではなく、創り出すもの。bitFlyerの戦略は、高度な技術力に裏打ちされているからこそ貫ける、経営の王道だ。
加納裕三◎東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマン・サックス証券に入社。エンジニアとして自社決済システムの開発を行う。BNPパリバ証券を経て、2007年にゴールドマン・サックス証券にトレーダーとして再入社。14年1月にbitFlyerを共同設立。 日本価値記録事業者協会(JADA)の代表理事。(photo:スーツ115,500円[3P価格]、タイ4,500円、チーフ1,500円(すべて麻布テーラー)、シャツ5,000円(麻布ザ・カスタムシャツ)/すべて麻布テーラープレスルーム 03-3401-5788)
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