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2016.04.08

トヨタの人工知能研究会社TRI、新拠点を開設 自動運転の研究を加速

Eric Thayer / Getty Images

トヨタ自動車の人工知能技術研究・開発会社「Toyota Research Institute(TRI)」は4月7日、同社3か所目となる研究施設をミシガン州アナーバーに開設すると発表した。

ミシガン大学近くに位置するこの施設は、デトロイト西方の準郊外と呼ばれる地域にある。知識集約型の産業拠点を目指してシリコンバレーと激しい戦いを展開するエリアだ。現在この地域では、自動車メーカー各社が自動運転車の開発を加速させている。TRIに協力するミシガン大学のエドウィン・オルソン教授はトヨタが同施設の開設を決めた大きな理由のひとつとして、同州がさまざまな環境を前提とした厳格な試験を実施できる場所であることを挙げている。

TRIのギル・プラットCEOは同日、自動車業界が自動運転技術に関してすでに達成したことの大半は、「運転が簡単な環境で必要とされることが大半であり、容易に成し遂げられることばかりだった」と指摘した。とくに、グーグルやアップルなどが自動運転車の技術開発に向けて試験を主に行ってきた日照時間の長いカリフォルニア州や西部の山岳地帯は、ほとんどが運転しやすい環境だったのだという。

プラットはさらに、「自動運転の助けが必要なのは、運転が難しいときだ」「TRIが対応していくのは、その困難な部分だ。トヨタが目指すのはすべての人に、いつでもどこでも安全な移動手段を提供することだ」と語った。ミシガン州をはじめ、降水量が多く、トルネードが発生することもある地域や、いくつものくぼみができた道路が走るエリアは、自動運転技術・システムにとって最も厳しい現実を突きつけるテスト環境を提供するはずだ。

トヨタが完全自動運転を実現するための研究施設としているTRIは、人工知能とロボティクス、材料科学の研究に特化した研究施設となる。開設は2016年6月、当初の職員は50人を予定している。すでに開設しているマサチューセッツ州ケンブリッジのマサチューセッツ工科大学(MIT)とカリフォルニア州パロ・アルトのスタンフォード大学に近い研究施設はそれぞれ、「シミュレーションやディープラーニング」、「車が必要に応じてドライバーをサポートする技術」の研究を専門としている。

米中西部から沿岸部にかけての各地域は、自動運転車の開発推進において主導的な立場を確立しようと苦心している。そうしたなかで、ミシガン州には自動車工学の専門家や科学者らが集中しており、その他の地域より高い競争力を保持しているといえる。「デトロイトスリー」が拠点を置くだけでなく、トヨタやホンダ、現代などの外国自動車メーカーの多くや、独ボッシュのような主要なサプライヤーが技術センターを置いているためだ。

さらに、アナ―バーには都市環境での自動運転試験を実施するための施設としては全米随一ともいえる「Mcity(エムシティ)」があり、フォードをはじめとする各社はすでに、同施設での試験を実施している。そのほか、官民パートナーシップによるウィロー・ラン空港を世界最大規模の最先端の走行実験施設に改修する計画も進められている。

編集 = 木内涼子

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