こうした中国の動きは25年以上前、ユニバーサルとコロンビアが、パナソニックやソニーといった日本企業に買収されたことを思い出させる。だが、両社とも買収後の成績は芳しくなく、中国による買収も同じような失望に終わるのかもしれない。米中政府の関係が友好的とはいえないのも気になるところだ。
バイアコムが子会社のパラマウントの株式売却を検討していると報道され、フィリップ・ドーマンCEOも外部からの専門家を招いて、一部売却の可能性を検討していることを認めている。最終的な合意までに3、4ヶ月を見込んでいるという。
バイアコムは昨年、半値以下となってしまった株価の回復を迫られている。パラマウントもここしばらくヒット作に恵まれず昨年はハリウッドの6大映画会社で最低の成績に甘んじた。急成長の続く中国の映画市場に目が向くのも当然の状況だ。
バイアコムは具体的な買い手の名前について言及していないが、あるアナリストによれば中国かインドが有望で、パラマウントの企業価値は100億ドル(1兆1,300億円)。5~10%の株式の売却で10億ドル前後を得られる計算だ。
高い売却価格が見込まれる要因は人気シリーズ「トランスフォーマー」の配給権だ。2014年公開の最新作、シリーズ第4弾の「トランスフォーマー/ロストエイジ」は中国での観客動員記録を塗り替えた。
パラマウントは常に中国での成功に希望を託していた。先の第4作には中国国営のチャイナ・ムービー・チャンネルと傘下のネット配信サービスJiaflixが、共同プロデューサーに名を連ねる。このうち一社がパラマウントの戦略的なパートナーになる可能性もあるが、同社を狙う企業は他にも多い。
中国の巨大インターネット企業はおしなべて米国での映画制作に投資している。アリババ、バイドゥ、オンラインビデオのLeEcoなどはいずれも既に多額の投資を行い、次の機会を狙っている。中国最大の映画チェーンを持ち、北米でAMCエンターテイメントを買収したワンダ・グループも当然、興味を持っているだろう。
中国の映画市場は急成長を続け、昨年はほぼ倍増。68億ドルの規模に達しており、10年以内に米国を抜き世界最大となると見込まれている。
筆者は個人的にはワンダがパラマウントを買収すると見る。ただ、アリババも攻勢をかけており侮れない。もう一社、候補を挙げるとすれば上海に拠点を持つチャイナ・メディア・キャピタル(CMC)だろう。CMCは既にドリームワークス・アニメーションとワーナー・ブラザーズの主要なパートナーだ。
かつての日本よりも、中国は多くをハリウッドに与えると思う。ハリウッドは中国の巨大市場向けの作品に意欲を示しているからだ。ただ、経営哲学の違いや、双方が現実離れした期待を抱いていることを考えると、失敗例も出てくるだろう。