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2016.03.08 10:30

映画産業も「爆買い」の中国 王健林が企む世界エンタメ帝国

Joe Scarnici / Getty Images

中国一の富豪、王健林(ワン・ジエンリン)が所有するAMC シアターズは、3月3日、米カーマイク・シネマズの買収を発表した。11億ドル(約1,250億円)の現金取引による買収となり、債務引受も含まれる。中国資本企業が米企業を買収する最新のケースで、これにより、600以上の劇場を持つ全米最大の映画館チェーンが誕生する。

今回の取引で、AMCは1株当たり30ドル(約3,400円)を支払う。カーマイク株の3日の終値に19.4%上乗せした価格だ。AMCは都市部を中心に5,426スクリーンを展開しており、カーマイクが主に郊外に所有する中型の2,954スクリーンと合わせ、8,380スクリーンを45州で展開することになる。

「AMCとの合併は極めて相互補完的で、両社のサービスとビジネスプランの方向性には大いに共通点があります」と、カーマイクの社長兼CEOのDavid Passmanはプレスリリースで述べている。

米パラマウント買収にも意欲的

王の大連万達集団(ワンダ・グループ)は2012年、AMCを26億ドル(約2,960億円)で買収。ワンダは中国で最大規模の映画館チェーン、ワンダ・シネマ・ラインも運営している。ワンダ・グループは今年、ハリウッドの映画制作会社レジェンダリー・エンターテインメントを35億ドル(約3,980億円)で買収したほか、バイアコム傘下のパラマウントの買収にも名乗りを上げている。また同社は、パリ郊外に建設予定の大型商業施設EuropaCityに33億ドル(約3,760億円)を出資することになっている。

ワンダのバイスプレジデント、ジャック・ガオ(Jack Gao)は、レジェンダリーの買収に際し「世界的な企業であることは我々にとって重要です。戦略的に中国国外で投資を行います」と、フォーブスの取材で語った。

娯楽ビジネス以外でも、中国はこれまで「爆買い」をしてきた。中国家電大手の海爾(ハイアール)は今年、米国ゼネラル・エレクトリックの家電事業を54億ドル(約6,140億円)で買収。また、中国オンラインゲーム企業のコンロン(崑崙、Kunlun Tech)は、米国SNSアプリGrindrの過半数に上る株式を約1億ドル(約114億円)で入手した。

AMCとカーマイクの合併は、危機感を持つ映画館産業界における最新の合併だ。2013年には、全米最大の映画館チェーン、リーガル(Regal)がハリウッド・シアターズを1億9,100万ドル(約217億円)の現金取引で買収した。そして2015年、カーマイクは、ロバート・レッドフォードの小規模なサンダンス・シネマズを3,600万ドル(約41億円)で買収した。

「競合企業が林立する産業は、100年にわたり企業合併を繰り返して来ました。映画館ビジネスもそういった産業のひとつです」とAMCのCEO、Adam Aronはロサンゼルス・タイムズに語っている。

米国での映画チケット売上は、昨年、記録的な110億ドル(約1兆2,520億円)となった。今回の合併はその後に発表されたが、これは、停滞気味の国内市場に対抗する措置だ。ストリーミングサービスやテレビ番組の多様化で、人々を映画館に向かわせるのは難しくなりつつある。チケットの平均価格はこれまでで最も高い8ドル50セントになったが、観客数はほぼ横ばいだ。

米映画協会はまだ2015年の数字を発表していないが、2014年のチケットの売上数は12億7,000万枚、観客1人あたりの売上枚数は年間3.7枚で、どちらも前年比6%の減少だった。今回の買収は関係者らの承認を待って、2016年末までに完了する見込み。買収の発表は3日の通常取引終了後に行われ、4日朝、カーマイク株は16%増の29.3ドル、AMC株は4%増の26.7ドルとなった。

編集=上田裕資

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