ただ、ザッカーバーグはおそらく、税務面でも事業面でも、ただのローンを組むには頭が良すぎるだろう。ある種の買い取りやジョイントベンチャーの可能性の方が高い。ただ、買うといっても何を買うのだろうか。カニエの知的財産権の一部であろうか。
その内容によって、買い取り代金はカニエにとっては通常の所得か、資産売却益ということになる。税率はそれぞれ、20%と39.6%となっているので、どちらにするのかは大きな問題である。
ローンと買い取りの区別すら、判然としない場合もある。ザッカーバーグがカニエにローンを提供したとしても、税務署がこの金銭が実際にはローンではなくて買い取り代金だと主張することも、時にはできてしまうのだ。
ジョナサン・ランドー(Jonathan Landow)に起きたことはまさにこれである。ランドーは担保として差し出した証券の90%相当額のローンを受けた。ローンはノン・リコース型であった。つまり、ランドーが返済できなくても、訴えられることはない。
証券は担保として差し出されていた。貸し手は証券を売却することができる立場だったし、実際に売却した。もっともランドーはのちに、自分の証券が売られてしまうとは知らなかったと主張している。ランドーはローン元本の1,350万ドルを全く返済しなかった。彼はまた、このローンによる受取金を所得としても申告していなかった。
税務署は、このローンの実態はローンではなく売却だと主張した。租税裁判所もこの主張を認め、この取引が書面上でいくらローンだとされていても、実際には売却であったことは周知の事実であると断じた。税務当局がローンを買い取り代金だと見なすリスクは本当にある。ここから学ぶべきことは、カニエが何らかの財産をザッカーバーグに売るのであれば、これは売上である旨をきちんと申告すべきだということだ。
ザッカーバーグとカニエの双方にとって節税メリットのある妥協策は存在するのだろうか。資金の出し手と、財産もしくはサービスの提供者の間ではしばしば、ジョイントベンチャーが設立されることがある。税法は複雑だが、他の方法では得られないような措置を受けることも多い。
たとえば、ザッカーバーグは株式持ち分を取得し、高金利な優先リターンを受ける。現在財政的に苦境にあり、大きな課税は避けたいはずのカニエも、この形であれば収益の申告を免れることができる。事実上の売却に近い取引が、ジョイントベンチャーの形を取る場合もあるのだ。取引の形態というのは、取引が実際にどのように行われるのかと同じくらい重要なのである。
これ以外の可能性はあまり高くない。もちろんザッカーバーグはいつでもカニエに贈与をすることはできる。贈与は所得税の対象ではないが、贈与税の対象となる。贈与は受け取る側の所得ではなく、贈与税を支払うのは贈与側である。贈与は通常、家族で行われるもので、ここではあり得ないことと考えられる。
どのような形になるにせよ、少なくともザッカーバーグとカニエは、ある意味一般人と同じでなければならない。税金のことを予め考えて、意図をしっかり文書化しておくことだ。そうすれば皆が幸せになるだろう。テイラー・スウィフトですら。