おそらく、マーク・ザッカーバーグ・フェイスブックCEOにとっては、5,300万ドルはそれほど巨額でもない。そして、この億万長者は、カニエの音楽活動に10億ドルを投資してくれと要請されている。
宣伝行為なのかもしれないが、カニエはツイッターアカウントで本人に直接、依頼ツイートを送っているのだ。テイラー・スウィフトの歌詞に対するカニエの反応(それ自体、さまざまな憶測を呼んでいるが)と同様にリアルなものに見える。
とはいえ、いずれにせよ巨額の金銭であることには違いない。そしてカニエの資金要請は、グーグルのラリー・ペイジCEOにも及んでいる。何とも無鉄砲な相手に、無鉄砲な要求をするものである。
自分のアイデアに対して、こうしたエリートたちに資金を投入してもらうことには複数のメリットがある。結果がどうなろうと、ニュースを騒がせることはできる。見出しを飾ることにかけてはカニエにはドナルド・トランプ並みの能力がある
こうした資金提供がどのように行われるのか、あるいは本当に行われるのかどうかはまだ明かされていないとはいえ、資金提供方法の詳細は重要である。実際に取引が成立するとして、資金はどのような形で提供されるのであろうか。ローンなのか、買い取りなのか、ジョイントベンチャーか、あるいは他の方法か。まずは最も考えやすい方法、通常のローンから検討してみよう。
ザッカーバーグがカニエに10億ドルを融資する場合、これはカニエの課税所得なのか? そうではない。ローンによる受取金は、それが本物のローンであれば、所得ではないからだ。
この違いは多くの納税者が税務当局と揉めることになる重要なところだ。ローンによる10億ドルの受け取りはカニエの所得にはならず、さらに彼は、支払利息を経費として控除可能となるはずだ。ザッカーバーグが受取利息を所得として申告するのだ。
ザッカーバーグが債務を免除することとなれば、その時点でこの金額はカニエの所得となる。これを債務消滅(COD)所得と呼ぶ。税法は一般に、返済を免除された時点で、それを現金収入と見なして課税することになっている。これがCOD所得のポイントだ。この不愉快なルールは、無視されがちになるのではと思われるかもしれないが、ローンが免除されると、一般にはForm 1099-Cが発行され、これをもって税務報告をすることになっている。