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2016.02.29

アフルエンザ(豊かさ病):ベビーブーマー世代がミレニアル世代から学ぶこと

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”アメリカン・ドリーム”を覚えているだろうか。かつてアメリカン・ドリームとは、「生命、自由、幸福の追及」を保障している独立宣言に定められた他の権利と同様、富める者にも貧しい者にも、我々全員に当たり前に与えられている権利だと思っていた。アメリカン・ドリームとは繁栄と成功のための機会の約束であり、あなたとあなたの家族が社会階層を上昇していくことを意味していたのだ。

歴史家であるジェームズ・トラスロー・アダムズは、アメリカン・ドリームを次のように定義している。社会階層や境遇に関わらず、「能力や業績に応じて全ての人にチャンスが与えられることで、だれにとっても人生はより良く、より豊かで、より充実したものになっていかなければならない」。そう、懸命に働き、教育を受けることは必要であり、それをすれば祖父母や親の世代よりはよい暮らしが”保証”されていたのだ。

ところが、アメリカ人の間で何世代も受け継がれてきたこうした考えが、ここにきて急に終焉を迎えたようだ。アフルエンザ(豊かさ病)にかかっているとされる富裕層ですら、子孫にアメリカン・ドリームを保証することはできなくなっているようなのだ。

我々ベビーブーマー世代はアメリカン・ドリームを受け入れていた。それが本物だったからだ。私自身、祖父母や親の世代に比べれば、社会経済的には高い水準で生活していると認識していた。私は懸命に働いたし、大学も出たし、良い仕事も得た。家を買い、その後もっと大きな家を買い、さらに大きな家も買った。ところが、同時にもう1つの現象が起きている。

ミレニアル世代は親世代とは違い、人生の目標として”より大きく、より良く”という価値観を必ずしも評価しない。金銭面についても我々とは違う見方をしている。

世代間の違いがあることは分かる。ミレニアル世代は世界とつながって育った一方で、政党や宗教、軍、結婚といった主要な社会的制度とはつながりを持たずにきた。家や学校にはコンピューターがあり、手には携帯電話やタブレットが握られ、身体にはタトゥーが彫られている。

ところで、我々はこの世代を、何にでも疑問を持つようにと教え込んできたこともあって、彼らはその通りに育った。ピュー研究所の調査によると、ミレニアル世代の特徴は「自信家で、自己表現に長け、リベラルで、陽気で、変化を受け入れる」。しかし彼らの人生はこれまで、必ずしもバラ色ではなかった。彼らは我々が”権威”にひれ伏して働く様子を見、レイオフ中には、人生の苦境への不平や、どれほど自己犠牲を強いられているか話すのを聞いていた。

そして彼らは不況期を生きるなかで、我々がレイオフされて、引退することもできず、率直に言えばパニックを起こしているさまも見てきた。やがて彼らも大きな借金を背負って大学を卒業、幸運にも”ホテル・ママ&パパ”に居住できたり、さらに幸運にもスターバックスでの職を得ることができたりすれば、感謝すべきだと言われてきた。そして、悲惨な失業や不完全雇用が、彼らの期待感を形成した。

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編集 = 谷本有香

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