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bannosuke / Shutterstock

収入格差の拡大が、ついにアメリカの人口動態を変えてしまった。ピュー研究所の報告書によると、40年に渡り人口の過半数を占め、アメリカ経済を牽引してきた中流階層が、人口の半分にまで減少してしまったというのだ。こうした変化は、アメリカの経済と社会の力学に深刻な影響を与えることになるかもしれない。

少なくともこの30年に渡って、生産性の上昇の恩恵のほとんどは富裕層へ流れ、収入も豊かさもその中でばかり上昇した。一方で、ほとんどのアメリカ人の実質所得は変わらないままで、物価だけが上昇している状態だ。

ピュー研究所の調査結果のひとつに、米国内の社会経済的な構成比率が大きく変わったことを示すものがある。調査では、世帯規模で収入を調整した数値で中間所得層を算出して中流階級を定義した。多くの富裕層を含めてアメリカ人の多くが自分のことを中流階級と認識している、ということは昔からよく言われてきたことだが、こうして収入で定義することで主観にとどまらない分析が可能になる。

この調査では、国政調査局と労働統計局が合同で実施した人口動態調査(Current Population Survey)のデータを使用しており、ここでの所得とは、税金、社会保障関連費、労働組合費、メディケア(医療保険)保険料等を差し引く前のグロス金額である。このため、低所得者とそうでない者の差が実際よりも少なく見えている可能性がある。

以下の表を見ると、分布が変化している様子がわかる。

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尚、レポートでは、中間所得層は3人の世帯で2014年度の年収が42,000ドル(約510万円)~126,000ドル(約1,530万円)としている。1971年には中間所得層が成人人口の61%だったものが2015年には50%にまで減少、最低所得層は16%から20%へ上昇している。下・中流層は変わらなかった。最高所得層は4%から9%へ上昇、ほぼ最低所得層の変化の裏返しである。上・中流層は2%上昇したがここは上下する傾向がある。

より高い経済的な階層への移動が一定量発生していることは明確で、これは喜ばしいことである。上・中間層から最高所得層を合わせると、成人人口の14%から21%にまで上昇した。しかし、同時により低い層への移動も起こっている。下・中間層と最低所得層は25%から29%へ上昇している。つまり、アメリカではお金持ちも増えていれば、貧しい人も増えているということである。そして、それこそが問題なのだ。

何百年にも渡る様々な研究の結果、ほぼどのような事象も正規分布は釣鐘型に近づくことがわかっている。そして、私たちの暮らす社会システムも経済システムも、正規分布を前提に出来上がっている。中流層が小さくなると、経済上重要な層が縮むことになり弱体化してしまう。下から上へ上るためのチャンスのハシゴの数は、上へと続く道の幅が太くなければ少なくなってしまう。上部と下部が大きくなり、その間が細ってしまうと、いずれ何か問題を引き起こす。

こうした変化は、理論上の変化が発生するにとどまらず、実際の影響も出てきている。ハーシー・チョコレートやスープのキャンベル、お菓子のモンデリーズ・インターナショナルといった食品会社もマーケットの二極化の実質的な影響を実感している。問題を回避したい各社は、富裕層から貧困層までを同時に獲得しようと「バーベル」戦略と言われる手法でマーケットを網羅すべく必死だ。小売業者も、メーカーも、その他の業種も同じ問題に気付いている。マーケットの二極化は、既に生々しい形でマーケットに影響を及ぼしているのだ。

ファッション史ジャーナリストのキンバーリー・クリスマン・キャンベルはあることに気付き、総合誌ザ・アトランティックの記事でこう述べた。昨今「没落した古きフランスブルボン王朝の華々かりし頃の体制を、羨望の感をもって彷彿とさせる広告を起用するトレンドがある」というのだ。

「某エネルギー飲料のCMに登場するキム・カーダシアンと同じように、視聴者はノリのよいビート族的なものと浮世離れした女王的なもの、そして革命的なものと癒し、といった二極的なものを欲しているのだ。消費主義は超富裕層たちだけのものではないのだから当然のことである。これらの広告は、社会の友和や責任ある消費を促すための現実的なアプローチではないかもしれないが、モノの売り方としてはなかなか巧みである。どの広告からも読み取れるのは、フランス革命が現代社会に生きる人の野心と不安のインパクトある象徴として使われているということだ。消費者はマリー・アントワネットの有名な話をハッピーエンドに書き換えてしまうことを期待しているのだ。それは、大衆にもケーキが与えられ、皆で食べるという結末である」

しかし、中間層の空洞化が進み過ぎると、マーケターたちが今は小手先で操ることのできている現象が、より深刻で危機的なものになってしまうかもしれない。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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