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男女同一賃金の話題が11月、再びニュースになった。女性は相変わらず男性よりも低賃金だという、男女間の賃金格差に関する二つの報告書が発表されたためである。アメリカのシンクタンク、経済政策研究所は、働く女性の数は記録的に増えており、学歴も高くなっているにも関わらず、2014年のアメリカ女性の平均時給は男性の83パーセントに過ぎず、格差はわずかに縮まったものの、それは、女性の賃金が上昇したからではなく、男性の賃金が伸び悩んだり減少したりしたためだと報告した。

世界経済フォーラムも2015年のジェンダー・ギャップ指数報告書を発表し、この報告書でも、男女間の賃金格差が続いていることが示されている。現在の女性の賃金は、男性の10年前の賃金なのだ。世界レベルにおける賃金格差は米国内よりもさらに大きく、2015年の世界平均で見ると、女性の年収は男性の52パーセントに過ぎない。男女の経済的平等への遅々とした歩みがこのペースで続けば、賃金格差が世界的に解消されるには、あと118年かかる(2133年になる)と、データは示している。

男女間の賃金格差を解消することが、なぜこれほどまでに難しいのか? それは、一般的に考えられているよりも状況は複雑で、多くの要素がこの問題に影響を及ぼしているためだ。男女の賃金格差問題は複雑ではあるものの、是正は可能だ。しかし、是正するためには、教育現場から採用担当者まで、人事担当者から娘を持つ親まで、政府から経済団体や人権擁護団体に至るまで、世界中の人々の努力が必要である。また、大胆な行動も必要になるかもしれない。

状況は複雑

魔法の杖をひと振りして、「男女の賃金よ、同一になれ!」と唱えるだけで問題が解消したら、どんなにいいだろう。が、ことはそう単純ではない。賃金格差問題を理解するためのデータを集めるだけでも、驚くほど難しい。正確な比較データを揃えるためには、コントロールしなければならない要素があまりにも多いためだ。賃金の違いに影響を与える可能性のある要因は、以下のように多岐にわたる。その仕事の経験年数、学歴、資格、特殊技能、業績あるいは生産性、業績評価の結果、直属の部下の人数または、その人が率いるチーム、課、部署の規模、シフトの違い(夜勤なのかあるいは半夜勤なのかなど)、地理的条件(ニューヨーク、ボストン、ロンドンなどの生活費の高い都市で働いているかどうか)、勤続年数。

以上は、格差を正確に分析するために、賃金比較調査において考慮すべき要素だ。マーケティングマネジャーとして働いている男性の給与と、同じくマーケティングマネジャーとして働いている女性の給与を較べて、男性のほうが女性より年に1万ドル多く稼いでいるから男女の賃金に格差があると結論づけるというような、単純なことではないのである。上に挙げたその他の要素をすべて分析し、それらの要素が給与の違いをもたらしていないかどうか見極める必要がある。ひょっとすると、男性のほうが女性より学歴が高かったり、その仕事の経験年数が長かったりするかもしれない。あるいは、男性は高い業績を上げてきたために、数年間にわたって昇給を続けたのかもしれない。つまり、同じ職種に就いている二人の労働者を見て、給与を比較するというような簡単なことではなく、もっと深いリサーチを行わなければ、正確な比較はできないのだ。

男女の賃金格差を引き起こしているその他の多くの要因を考慮すべき。

米国会計検査院は、男女の給与の違いを生み出す要素を検証し、就労パターンが鍵を握っていることを発見している。「具体的には、女性は仕事の経験年数も、1年間の労働時間も、フルタイムで働く人も、男性より少なく、非就労期間が男性よりも長期にわたる」という。また、女性はキャリアを積むことやより高い給与を求めるよりも、仕事と家庭のバランスをとりやすいフレキシブルな仕事を選びがちで、そのことが給与に影響している可能性があると報告している。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの上級研究員、キャサリン・ハキム博士は、個人の選択や好みも、女性が職場での平等を達成することを妨げている可能性があると報告している。全国規模の面接調査の結果、女性は人生の目標、価値観、願望において、3つの異なったタイプに分かれることがわかったという。すなわち、仕事にフォーカスする少数派と、家庭と家族にフォーカスする少数派、そして仕事と家庭の組み合わせを求める多数派の3つである。これとは対照的に、男性の大半は、仕事を目標に定めがちだという。こうした個人の選択や好み、そして態度が、賃金に影響している可能性がある。

給与交渉における男女の違いも、賃金格差を生む要因であることがわかっている。女性は男性ほど給与交渉をしないことが、複数の研究において明らかになっているのだ。ある研究所の実験(スモール他、2007年)によると、男性が昇給を要求する可能性は、女性の9倍にのぼった。全米経済研究所の実験によると、「給与に交渉の余地があることが明確に示されていない場合、男性は女性よりも交渉に挑みがち」であることがわかった。昇給交渉をしないことは、時間の経過と共に女性の給与と所得獲得能力に悪影響を及ぼし、男女間の賃金格差を生み出す。

偏見と差別が、一般に考えられているよりも大きな問題かもしれない。

米国会計検査院の研究者は、収入に影響を及ぼす主な要素を考慮に入れても、すべての賃金差を説明することはできなかった。米国会計検査院が出した結論は、男女差の一部は「職場における差別または、女性が選べるキャリアや仕事に関する何気ない差別意識の結果である可能性がある」というものだった。

経済政策研究所の報告書も、同じ結論を導き出している。「業界、経験、学歴といったさまざまな要素をコントロールした後でも、男女間の賃金格差の41.1パーセントに合理的な説明を見つけることができなかった」というのだ。この報告書も、「おそらく、差別が賃金格差を存続させている要因だろう」としている。

男女間賃金格差の説明不可能な部分は、アメリカ進歩センターが指摘しているように、「あからさまな性差別から、無意識的な性差別、昇給交渉をしたがらない女性達に至るまで、いくつかの説明が考えられる」

解決するには、さまざまな角度から問題に取り組むこと。

この問題には多くの要素が影響しており、状況があまりにも込み入っているため、現在就労中の女性たちの賃金格差を縮小する努力と共に、今後の世代が同じ問題に直面する可能性を減らすための解決策が必要である。その方法を、以下にいくつか挙げた。

現在の賃金格差を縮小するためにできること:

・人事業務分析、業務評価及び報酬要素評価を通して、社内で一貫した報酬システムを構築する。女性差別につながる可能性がないかどうかを求人ごとに精査することを、人事の通常の求人承認プロセスの一部とする。

・マネジャーや人事担当者を教育し、採用過程における女性に対する偏見の問題を減らし、根絶する。

・報酬の透明化を図る。これは先日、フォーブス・ブログでキム・エルセサーが提案した対策である。「報酬を透明化すれば、同僚の収入を誰もが知ることができ、女性達は同じ仕事をしている男性よりも給与が低ければ、気づくことができるだろう」エルセサーは例として、ソニーのハッキング事件をきっかけに、シャーリーズ・セロンが、「自身と、『The Huntsman』における共演者、クリス・ヘムズワースとの出演料の差額1千万ドルを要求できた」ことを挙げている。大胆な提案だが、エルセサーが指摘するとおり、「こうすれば男女間の賃金格差問題はおのずと解消するだろう」

・給与交渉を廃止する。これもエルセサーの提案だ。「男性のほうが上手に交渉するからといって、男性が得をするのは奇妙に思える。とりわけ、交渉が、その職種の採用基準と無関係である場合は」とエルセサーは言う。「経験の度合いが人によって異なる管理職クラスの社員を採用する場合は、給与交渉を完全に廃止するのはむずかしいかもしれないが、新入社員の採用に際しては、簡単に実行できるはずだ」ゼネラルモーターズがサターンで導入した、価格交渉の廃止を連想させる提案だ。

今後の世代が問題に直面しないためにできること:

・男女間賃金格差を根絶するための法案を通過させる。アメリカの場合は、既存の法律を強化して、実効性を持たせる(給与公平法の成立等)。

・男女間賃金格差と、「女性が同じ仕事に対して同一の賃金を受け取ることを妨げている特定の障害」の解消に取り組む政府の委員会または作業部会を設置する。

・高校や大学の授業で、従業員を性差別から守るための法律に関するディスカッションを行い、この問題に意識を向けさせる。男女間の賃金格差というテーマを授業単位とし、生徒に状況を分析させて、改善法を模索させる(あるいは、生徒の分析レポートのテーマとして使用する)

・大学レベルでは、男女ともに給与交渉を学部レベルで必修とする。

・娘に交渉の仕方を教える。企業が新入社員の給与交渉を続けるのであれば、親(とくに父親)が娘に交渉術を教えることが大切だ。そして、娘達が仕事に就くにあたって、その交渉を心理的にサポートして導くべきである。

・男女間の賃金格差が生じている時、あるいは生じようとしている時に、声を上げることを若い男性に促す。テレビドラマ『フレンズ』の主役の一人、デビッド・シュワイマーはこの好例だ。シュワイマーは当初、このドラマで最大のスターと見られており、シュワイマーのエージェントは、彼に出演料の交渉をさせようとした。ところが、シュワイマーは他の出演者と話し合い、「みんなでギャラ交渉をして、同じギャラを勝ち取ろう」と提案したのである。その結果、どうなったか。NBCは彼らの要求を呑んだのだ。

こうした対策を講じても、男女間の賃金格差が解消しなかったら……より大胆でショッキングな手段に訴える必要があるかもしれない。1975年10月24日、アイスランド女性の90パーセントが男性と同じ権利を要求して、仕事と家事を放棄した。男性の多くは、単なる冗談だろうと解釈した。このストライキによって国家機能は麻痺し、なに一つ機能しなくなった。その時ようやく「男性は理解し始めた」のである。

結果はどうだったか? ストライキの1年後、アイスランド政府は男女平等委員会を設置し、男女平等法を成立させ、職場や学校における女性差別を違法と定めた。5年後には女性初の大統領が誕生。現在アイスランドは、ジェンダー・ギャップ指数で世界一男女平等が進んだ社会とされており、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンと、北欧諸国が僅差でそれに続いている。2015年にアメリカは何位なのかと言えば、8つランクを落として28位となっている。

そう、賃金の差には多くの要因や要素が影響しており、男女間の賃金格差は複雑な状況にある。それでも、男女間の賃金平等を達成することに意味があるのは間違いないし、格差が解消されるのに118年もかかるとは信じがたい。さまざまな角度から問題に取り組めば、プロセスを加速できるはずだ。だが、それでも充分ではないかもしれない。同じ仕事に同じ報酬を与える必要があることを人々に気づかせるためには、アイスランドのように、恐ろしく大胆な行動が必要になることもあるかもしれない。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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