このように日本人はお賽銭には財布の紐が緩いが、残念ながら寄付やチャリティーには意識の低い国民のように思う。街の大道芸人に対しても、欧米人のように決して気前が良くない(もちろんお賽銭には神様へのご挨拶とお礼とお願いもこめられているので、寄付とは違って当然なのかもしれないが)。テレビでも毎年のように大掛かりなチャリティー番組が放送されているけれど、それで国民の意識がここ30年で高まったかというと疑問だ。
日本人一人ひとりが寄付について考え、集まったお金を何に使うかを学ぶためには、どうしたらよいのか。考えついたのが、募金箱のための建造物を建てること。
たとえば階段だけで構成された塔のような形で、最上階に募金箱があるだけのシンプルなものはどうだろう。ビルバオ・グッゲンハイム美術館をデザインしたアメリカの建築家、フランク・オーウェン・ゲーリーなんかが手がけると、みんなこぞって登りたくなるかもしれない。もしくは、新国立競技場の一騎打ちに挑んだ隈研吾さんと伊東豊雄さんに頼んでもいいかもしれない。
塔はかなりの階段数にしたい。それなら、登っている最中には苦しみとは何かを考えられるし、最上階まで登れたら深い達成感も得られるし、眼下に望む風景も楽しむことができる。そして同じ地球に生きるたいへんな状況の誰かのことを想い、塔の入場料を払う感覚で募金箱へと寄付する。募金箱はつまり、「宗教観を排除したお賽銭箱」というイメージでしょうか。
「集まったお金を何に使うか?」については、TEDのように何人かがよい使い方をスピーチし、日本国民がいちばんふさわしいと思ったアイデアに対してネットで投票すればいいと思う。スピーカーは未来を考える若者たち限定。少子高齢化解決、難病医療の改革、ワクチン開発、過疎化予防、日本がいま抱えている課題を解決するユニークなアイデアに投資するのである。
塔建設費用は新国立競技場を落札したゼネコンに頑張ってもらおう。ほら、なんだか登りたくなってきませんか?