その要因として、次のふたつに着目したい。ヤム・チャイナが香港証券取引所に上場されるかもしれないということと、タコベル・チェーンで再攻勢に出るという、ヤム・ブランズによる一連の発表の中からの二点だ。
香港での上場は、以前から報じられていた中国事業を別会社へスピンオフ(分離)する計画の一環として実現するかもしれないものだ。中国事業の分離は不振解消のために投資家らから迫られていたものだが、その結果ヤム・チャイナの株式が香港市場で扱われるようになれば、同社株は中国本土の投資家にも手軽に買えるものとなる。
ヤム・ブランズ本体が上場しているニューヨーク市場にヤム・チャイナも上場するのではないかという予測は以前からあったが、今回の発表で、香港市場とのダブル上場を同社が検討していることが明らかになった。これはどうやら優れた戦略だ。香港市場ならアジア域内の外国投資家も誘引できるし、すでに述べたように中国本土の投資家にも買いやすい。
さらに、ブランドイメージの点でも香港上場は優れた選択だ。KFCやピザハットなどのヤム・ブランズの事業はアジア人の目にはいかにもアメリカ的なファストフードと映り、チープで脂っこいという悪印象を持たれがちだが、この上場によってアジアの会社というイメージも出てくるからだ。
そのお陰もあって、11月には3%の下降になるのではと見られている既存店売上高が、12月には横ばいから最大4%までの上昇になりそうだとヤム・ブランズは発表した。とりわけ大きいのはKFCの業績改善だ。ヤム・チャイナの業務展開の大部分を占めるKFCチェーンは、前述のようなイメージ悪化や鳥インフルエンザの流行もあって、11月には既存店売上高が1%の減少と見込まれているが、それが12月にはプラスに転じる見通しなのだ。
では次に、タコベル・チェーンでの再攻勢について見ていこう。タコスやブリトーなどのメキシカンテイストを前面に押し出したこのチェーンは、以前にも試験的に中国に出店したことがあった。上海に少なくとも1店舗が開店したのだが、あまり受けが良くなかったようで、いつの間にかひっそりと店じまいしてしまった。
それを今回は大規模に展開し、ヤム・チャイナの新たな成功エンジンにしたいのだという。タコベル・チェーンの米国外の店舗は現在280店だが、それを2020年までに1000店舗に増やすというのだ。経営陣のひとりがインタビューで語ったことによると、来年には中国に再進出する予定だという。
メキシコ料理のファンで、かつてタコベル上海店で食べたこともある者として言わせてもらうと、メキシカンというテイストを中国の消費者に受け入れてもらうには高いハードルがあると思う。だが、ヤム・ブランズのイメージを中国向けにローカライズする試みがうまく行けば、追い風が吹く可能性もある。さて、どうなるだろうか。