“完璧な”人材候探しはもういい加減にやめて、“適当な”人材を採用しよう。

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我々が、新しい人材を雇うには、最低でも45日間の猶予をマネジャー(部課長)に与えるべきだと、常日ごろからCEOに助言している。

新しい人材を雇うための資金支援をトップ経営層に要請しようとするとき、新しい人材の獲得ははたしてトップ経営層の最優先事項になっているだろうか。「それが当然では?」と誰も思うだろうが、現実世界ではかならずしもそうではない。
一般に新しい人材が採用されるまでのプロセスは次のようなものだろう。

まずマネジャーが新しい人材採用の承認を得る。次にマネジャーは人事部に人材獲得のための緊急出動を要請する。そのうえで、事部は求人広告出す。だが、そうしたプロセスの中に
糖蜜がだんだんと染み出してくるうちに、すべてが遅くなってくる。

応募者たちが、オンライン求人に応募したあと(あるいは面接に出席したあと)、求人企業からの返事を受け取るまでに数週間待つことは珍しいことではない。だから我々は、45日間経っても埋まらないポジションは少なくとも6か月間は空席のままになることをマネジャーにCEOたちは教えるべきだと主張しているのである。

そのチームに対するより大きな助けを求める必要があるにもかかわらず、HRマネジャーの十分な時間と関心に値する優先事項にならない場合、それはたいてい、新しい人材の給与として用意されたおカネの額が原因になっている。すべてのCEOがこのことに気づけば、採用プロセスをスピードアップすることをHRマネジャーはもっと早く知るに違いない。

条件に合った、頭のいい、力のある人材がどこにでもいるのに、完璧な候補者を探すために何か月も費やすことほど愚かなことはない。これは大企業であっっても新進企業であっても、あるいは非営利団体であっても変わらない。

採用決定の過程であまりにも特定の経験を重視する
HR担当者や採用責任者が何と多いことか。彼らは、まったくばかばかしい理由を付けて、気に入らない履歴書をはねる。いわく「マーケティングマネジャーという肩書きにふさわしい経験年数が少なかったから」、いわく「履歴書の中にたった1つのキーワードが抜けていたから」などなど。

これほど愚かしいことはない。こんな方法をいつまでも続けていれば、企業も、株主も、顧客も、それに我々自身もダメになってしまう。あなたの知らない世界や業界でユニークな経験を積んだ、賢い人は、いつも仕事をうまくこなしている。一部の専門用語が仕事を助けるなどと考える人がいたとすれば、それは、頭が良く本当に探究心のある人に出会ったことがなかったからにすぎない。

今日、どんな企業も、創造的に考え、また問題を臨機応変に解決してくれる人を求めている。企業はまた、自分の生活と職業に理想を持ち、単にカネのためではなく楽しさと興味のために働く人を求める。

だが、現在の雇用システムは、素直さや大人しさ(どちらも米国企業がいちばん嫌うもの)を正しく評価する仕組みになっていない。応募書類を送ったあと応募先の企業からの返事を1週間も10日もジッと座って待っているような人は、その企業を将来“背負って立つ”ような人材ではない。

もしあなたが、あなたの会社の採用システムに対する権限を持っているか、あるいはそのための“財布のひも”を握っているのであれば、2016年1月1日をけっして忘れてはいけない。なぜならその日は、採用申請・承認プロセスに“使わなければダメになる”基準を適用する最適な日になるはずだからだ。


もし貴社のマネジャーたちが、採用計画から求人までの面倒な手順にうんざりしているとしたら(あるいは貴社の複雑な採用手順そのものが“元凶”だとしたら)、2016年1月1日はそうした問題を解決する絶好の機会といってよい。

迅速な採用に対する責任を持つマネジャーは、壁を見通すことができる、空想の“空飛ぶ”応募者についてもうこれ以上あれこれ思案する必要はない。彼らは、仕事に必要な資格要件について、またターゲットとする給与水準についてもっと現実的になるべきである。そうすれば、“100万人の中の1人”を見つけるために何回も何回も広告を打ち、いくつもいくつもウェブサイトを作る代わりに、ホンモノの人間と膝を交えて話し、彼らと面接する時間が取れるようになるはずだ。

そのためにはまず、貴社の求人広告に書いてある必須条件の半分を削除することである。新規採用に求める本当に必要な条件は「シャープ」で「できる」人材――それだけである。求人広告の中の箇条書きにこだわっているうちは、何も進歩しない。なぜなら、それは、本当に力のある人材を視界の外に追い出してしまうからだ。

次のステップは、貴社の求人広告に応募してきた人にすぐに返事することである。「ご応募はありがたいのですが、ご期待に沿えないことをご了承ください」と書かれた丁寧な返事(HR部門責任者の署名が付いた)でもいいし、電話によるインタビューか“生の”面接に関するEメールでもよいだろう。

求人広告の掲載と実際の面接との間に、いくつも余分なステップを入れていた人は、今すぐそれらを止(や)めるべきである。そうしたステップは採用手順に要らぬ労力と時間を加えるだけであり、何の助けにもならない。例えば、文章の参考例、“正直度テスト”(考えてみれば何と失礼なことか)、面倒で押し付けがましいアンケートなどはみな、よりよい人材を見つけるうえで何の役にも立たない無意味な作業といってよい。

応募者の知性、賢さ、人柄、求人ポジションに対する適格性を面接だけでは判断できないという人は、面接の方法を学ぶか、いっそのことそうした労力が伴わない部署に異動した方がよいだろう。

新しい日が到来するのである。“人間が働く職場”はもうそこにある。賢明な経営者は、最善の人材を獲得するために(追い出すためではなく)今や採用プロセスの“独自仕上げ”を進めている。

あなたの頭の中だけにいる理想の人材探しや、あなた自身の応募要件を書くのはもう止めにして、あなたの眼前にいる生きている人材を今こそ獲得すべきである。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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