ライドシェアリング・サービスの大手企業たちが、共通のゴールに向けて手を組み始めた。そのゴールとは、業界最大手のUberを倒すことだ。
9月16日、Uberのライバル企業のLyftとの提携を発表した中国企業、ディディ・クアイディはこれまで、密かにグローバルネットワークの構築に取り組んできた。8月には、東南アジアの配車アプリ、GrabTaxiが3億5,000万ドル(約420億円)を調達したラウンドを主催している。このとき、ディディ・クアイディ社長のJean Liuは、今後も同様のアプリ連携を進めていくと述べていた。
Uberに対抗するライドシェアリング大手のつながりは緊密で複雑だ。GrabTaxi、ディディ・クアイディ、インド大手のOla Cabsは、いずれもソフトバンクから出資を受けている。ほかにも、China Investment Corporationは、ディディ・クアイディとGrabTaxiに出資。米国の投資企業Coatue Managementも、GrabTaxi、ディディ・クアイディ、Lyftに資金を注いでいる。
また、アリババもディディ・クアイディとLyftにそれぞれ出資している。
ここで、9月16日のディディ・クアイディの発表をおさらいしておきたい。ディディ社は評価額160億ドル(1兆9,200億円)で30億ドル(約3,600億円)の資金調達を完了。アメリカにおけるUberの最大のライバルであるLyftに1億ドル(約120億円)の出資を行った。
両社は戦略的パートナーシップを結び、アプリを相互連携させて、利用者が双方の配車サービスを利用できるようにすると発表した。現在、米中間を年間800万人が行き来しており、両社は今回の連携によって利用者の利便性が高まるとしている。
Lyftの利用者が中国へ渡航すると、使い慣れたLyftのアプリを立ち上げれば、ディディ・クアイディの運転手を呼び出すことができ、その逆もまた可能になる。今回の提携により、両社は時間、労力、資金を使うことなく一気に新たな巨大マーケットにリーチを拡大し、海外の運転手を獲得することが可能になる。Lyftもディディ・クアイディも、これまで海外進出を行っていない。Lyft社長のJohn Zimmerは、新サービスを来年早々に立ち上げるとしている。
「グローバルのライドシェア業界は新しい時代に突入しており、我々はそのトレンドをけん引している」とディディ・クアイディ社長のJean Liuは、同日ニューヨークで行われた記者会見で述べた。「今回の提携は、運輸業界の課題にグローバル連携で取り組む初めての事例だ」
ライドシェアリング業界の巨人である両社は、Zimmerがディディ・クアイディの投資家を介してLiuに出会ったことから意気投合した。三月にLyftのオフィスで二週間過ごしたLiuは、Lyftの運転手のお陰でアメリカ滞在を快適に過ごすことができ、アメリカにおけるLyftの成長を確信していると述べている。Zimmerは、ディディ・クアイディによる1億ドルの出資について、「提携関係を長期的に維持するつもりだ」とコメントしている。
こうした反Uber包囲網によって、参画企業は相互に旅行客やビジネスの知見を共有できると同時に、自国のマーケットを守ることに専念することができる。一方、Uberは積極的に海外展開を推進し、これまでに60ヶ国に進出しているが、現地企業との提携や買収はまだ一度も行っていない。Uberの投資家は、培ったナレッジを自社内に留めることで優位性を保てると考えている。
「配車アプリのシステムは、経路選択、運転手の空き状況やマッチング、不正利用の検知などにおいて、アルゴリズムに依存している。我々は、中国やインドなどの競合に比べて長年の実績があり、彼らにはない優位性を持っている」とUberに初期に出資したBenchmarkのBill Gurleyはフォーブスに対して述べている。