米CBSテレビのドキュメンタリー番組『60ミニッツ』の制作総責任者が4月22日、番組から退くとスタッフに伝えた。トランプ政権への批判で知られた同番組を率いる彼は、新政権を敵に回すことを望まない親会社のもとで、「独立した形で番組を運営することが不可能になった」と述べている。
『60ミニッツ』のエグゼクティブ・プロデューサーを長年務めてきたビル・オーウェンズは4月22日、自身が正しいと信じる番組の編集方針を、「これまで通り続けることが許されないことが明らかになった」と、スタッフに宛てたメモで述べたとニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は報じた。
この動きの背後には、トランプが昨年CBSの親会社、パラマウント・グローバルを相手取る100億ドル(約1兆4000億円)の訴訟を起こしたことが挙げられる。この訴訟でトランプは、当時の民主党大統領候補だったカマラ・ハリスへの60ミニッツの独占インタビューについて、CBSが編集を加え、彼女が「有能であるかのように見せかけた」と主張している。この訴訟は現在、トランプとCBSとの間で和解交渉中と報じられている。
一方、CBSの親会社であるパラマウント・グローバルは現在、自社を映画製作会社のスカイダンス・メディアへ売却する取引に関する連邦通信委員会(FCC)の承認を求めており、パラマウントの支配株主であるシャリ・レッドストーンは、トランプが起こした訴訟で和解することに前向きだと報じられている。
これに対し、オーウェンズは「いかなる和解の一環としても謝罪はしない」と述べていたと、NYTは以前に報じていた。
トランプは、以前から自身に不利な報道を行ったメディアに対して訴訟を起こしてきた。2期目の政権で彼は、ホワイトハウスの記者会見場を利用してメディアに圧力をかけ、AP通信のような老舗の報道機関を排除する一方で、右派のジャーナリストに特等席を与えている。
トランプは『60ミニッツ』とCBS、その親会社であるパラマウント・グローバルに対して特に批判的で、先日も同番組が自身に関して2つの不正確な話を伝えたと改めて攻撃し、FCCにCBSの放送免許取り消しや「最大限の罰金と処罰」を求めていた。
トランプは昨年11月、FCCのトップに共和党側委員のブレンダン・カーを任命すると発表した。カーは、トランプ政権2期目で政府改革計画「プロジェクト2025」のFCC部分を執筆した人物であり、トランプの意向に従わないメディア企業に対してたびたび攻撃を仕掛けてきた。